読んでみた

百寿はそんなに目出度いことか

佐々木学著/現代書館/税込み1650円

 約30年にわたり長野県で地域医療に携わってきた医師による、高齢者が最期を自宅で迎えるためのヒントを示した著書である。

 自身を「軟弱な在宅主義者」と呼ぶ。高齢者の本音は在宅死であり、最期は自宅で過ごすのがベストと考えてはいる。それでもそれは容易ではなく、家族に在宅を勧めることはしない。在宅と病院・施設双方の長所短所を説明し選択してもらうようにしている。

 著書には医師の言うことなど聞かず、介護サービスなども気に入ったものしか受け入れず、寝たきりのまま自宅で大往生した人の例が出てくる。病院に戻らないことで本人と家族の気持ちは一致していた。一方で、入院中にしていたリハビリを自宅でも自発的に継続することは難しく、脳梗塞(こうそく)を発症して結局は病院で亡くなった人など豊富な事例で在宅死の困難さも浮き彫りにしている。

 「在宅」の選択には、「もう十分生きた」という諦念が必要だとも指摘する。決められた日課に従って一日が過ぎる施設と違い、在宅なら何をするか自分で決めなければいけない。寿命が延びても健康に過ごせない時期が長いのなら孤独と寂しさに耐える時間が延びたと覚悟する必要がある。だからこそ「仲間を作り、体を鍛えて健康寿命を延ばそう。楽をしてはダメなのである」と結んでいる。