読んでみた

親不孝介護〜距離を取るからうまくいく

山中浩之、川内潤著/日経BP/税込み1760円

 自分で何でも親の面倒をみようとする「親孝行の呪い」から逃れることで、共に穏やかに過ごせる——。実母の遠距離介護の経験からこうした思いを実感した編集者の山中氏とアドバイス役の介護のプロ、川内氏が対談も交え「親との距離を取るからうまくいく」理由を解説している。

 在宅介護ができないのを負い目に感じると、お金をかけてハード面が優れた老人ホームを選んでしまいがち。しかし、スタッフの質や親が求めているものと合っているかが重要だという。介護は「親」の役を降りた個人の幸せをどう守るかであって「親孝行」とは関係ない、と言い切る。

 優秀なビジネスパーソンほど、介護に失敗し離職しやすいという。成果主義という価値観に染まっていて、努力と結果が一致しない介護に疲れ切ってしまうからだ。介護で燃え尽きないよう、企業は社員に対し「介護の実務を支援してはいけない」と忠告する。

 有能な人はSOSを発信したがらない。が、介護は自ら救いを求めないと誰も助けてくれない仕組みであることも強調している。