読んでみた

しあわせの高齢者学~「古稀式」という試み

樋口恵子、秋山弘子、樋口範雄編著/弘文堂/1980円(税込み)

 「高齢者の、高齢者による、高齢者のための学び」を目指す蔵野野大学しあわせ研究所(東京都)が昨年から始めた取り組み、「古稀式」での講座を採録した。

 編著者でもある樋口恵子・東京家政大名誉教授は、今の高齢女性は若いころに就職の機会すら乏しかったこと、男性より平均寿命が長いことなどを挙げ、「高齢社会の問題は特に女性の問題」と指摘した。男女平等教育の推進を訴え、また日本は「人生50年」の教育しかしてこなかったと述べ、これからはとりわけ国民が「デジタルの趨勢(すうせい)」から置き去りにされない政策を進めるよう求めた。

 武蔵野大の菊地悦子看護学部教授は認知症への対応や予防に時間を割いた。周りがその人の立場に立ったパーソン・センタード・ケアをすることによって、記憶障害などがあっても行動や心理症状がある程度落ち着く例を説明。生活習慣病や難聴などが発症リスクを高めるとし、運動、食事、社会参加の重要性を語った。

 長寿社会の課題から個人の資産運用まで、12人の有識者が語った「高齢者学」の総論、各論に幅広く触れることができる。