読んでみた

認知症が見る世界 現役ヘルパーが描く介護現場の真実

漫画・吉田美紀子、原作・田口ゆう/竹書房/1320円(税込み)

 認知症当事者が感じる孤独や恐怖を、本人の視点から描いた漫画だ。作者は現役ヘルパーの漫画家でシリーズ2作目となる。

 加藤さん(75)は倒れて苦しむ妻の表情を「どんな感情だ?」と考えるうち散歩に行くことを思いだし、妻を放置する。後ほど「お母さん危なかったのよ!」と叱る娘を見て「怒っている」と感じ、「何かが間違っているらしい、俺のすることは」と落ち込む。

 入所に向けて娘と話す施設の担当者から「住み込みで働いてほしい」と頼まれ、加藤さんは「俺が居ていい場所はここ(自宅)じゃないんだろう」と、施設に入る。他の入所者の車いすを押す「仕事」を与えられ、笑顔でお礼を言われた加藤さん。「間違えなかった。居ていいのかここは」と前向きに施設での第一歩を踏み出す。

 車いすの金村さん(81)は幼女のころ、野良仕事を手伝わないとして親から虐待を受けたことが脳裏に浮かぶ。「働かないと」「役に立たないと」。そう思い詰め、自分でトイレに行こうとしては転倒することを繰り返す。やがて入院し、病床に拘束されてしまう。

 認知症の人にも意思や豊かな感情があることがよくわかる。