読んでみた

認知症にやさしい健康まちづくりガイドブック

今中雄一編著/学芸出版社/税込み3300円

 「認知症の人と家族にやさしい社会」「経済競争力のある社会」「人々が健康で幸福な、持続可能な社会」——。この三つを兼ね備えた地域共生社会づくりに向け、「当事者と支える人」「社会保障・制度」「まちづくり」への各アプローチについて、専門家17人が知見を寄せている。

 まちづくりのポイントとして、広井良典・京都大教授は「歩いて楽しめる街」を挙げる。自動車中心、道路で分断された都市では人々の「つながり」が薄れる。「居場所」を増やすためにも商店街と高齢者住宅の一体的整備を進め、過度に自動車に依存しない地域づくりが求められるという。

 編著者で京大教授の今中氏は「健康・ウェルビーイング」を主目的とし、手段として経済性を考える重要性を指摘する。幸福度が高く競争力も備えたフィンランドやデンマークのように「福祉と教育」に注力するよう訴えている。

 他にもICT(情報通信技術)の活用、低年金予防の重要性や、認知症への偏見を取り除くうえでマスメディアの役割が大切といった指摘が並ぶ。