読んでみた

介護事業の守り人

田畑陽一郎著/幻冬舎/税込み1760円

 著者は医師、経営者として医療・社会福祉法人の買収を進め、千葉を中心に23施設で医療・介護サービスを展開している。苦境にある介護事業所に「M&A」(合併・買収)を持ちかけ、事業継承にこぎつけた事例集だ。

 約40年、関東で11施設を運営する法人からSOSが届いた。複数の老人ホームの入居率が60%を下回り、青息吐息だという。

 著者はマネジメントに問題ありと感じた。施設長も最新の知識を持つ若い職員も皆、古株職員の発言に押され、改善提案が軒並み潰されている。若手は離職し、人手不足が慢性化していた。研修体制を改め、問題職員を他の施設に移し、若手の提案が生かされるようになると変化は外部にも伝わり、入居希望者も増えたという。

 病院と介護施設双方を経営する法人は、一見うまくいっているようだったが、実際は介護職員側が不満をため込んでいた。病院と介護施設の間に上下関係が生じていたのだ。買収後、病院長に人望のある人物を招き介護施設側の意見も通るようになると、両者の連携はよりスムーズになった。