読んでみた

ビジネスケアラー 働きながら親の介護をする人たち

酒井穣著/ディスカヴァー携書/税込み1210円

 30年以上仕事と母親の介護の両立に苦悩した著者は、その体験を通じて介護のコンサルティング会社を起こした経営者。本書全編に「介護を理由に仕事をやめてはいけない」という考えが貫かれている。

 少子高齢化で現役世代が先細るなか、著者の会社でも50〜54歳の8人に1人がビジネスケアラーという。子育てとは逆に介護は時間とともに負担が増え、復職に時間がかかるほど巨額の貯金が要る。費用がかさむ、生活苦から介護サービスを受ける余裕がなくなる、介護により時間を取られて再就職が遠のく……介護離職は最悪のループを生むと警告する。

 仕事との両立に大切なのは「介護期間に休むことで離職を防ぐ」のではなく、「介護中でも働き続け、パフォーマンスを落とさない」ことと指摘する。離職防止策として、介護が始まる前から介護サービスの勉強を進めること、1人で抱え込まず身体介護や家事はプロに頼って自分や家族の負担を減らすこと、を挙げている。

 介護休業は分割取得を勧める。上限の通算93日間をまとめて取ると職場への復帰が難しくなって離職につながる恐れがある。企業には、ビジネスケアラーが求めているのは「休みやすさ」ではなく、「仕事に穴を開けないで介護も成功させること」だと説く。