読んでみた

八重子のハミング

陽信孝著 1300円+税(小学館)

 「同じこと 繰り返し問ふ 妻の日々 繰り返し答ふ われの日々」。1939年生まれの著者は、歌人であり宮司、91年に胃がんを告知され、4度の手術を受けた身。最初の手術で入院中、妻・八重子さんの異変に気付く。アルツハイマー病の始まり。本書はそれからの11年間を短歌と文でつづる。「紙おむつ 上げ下げをする 度ごとに 妻は怒りて われをたたけり」。表紙カバーの帯には「まさかの同時発病。老老介護4000日の軌跡。これは現代の『智恵子抄』である」と記されている。

2003年 財団報「新時代 New Way of Life」より