読んでみた

女の活路 男の末路

袖井 孝子著、1200円+税(中央法規出版)

 今や人生80年時代、いや100年時代の到来も夢ではなくなった。長寿が現実になり、若々しい高齢者が増えたにもかかわらず、老後不安が男女を襲う。年金は減額され、医療費も上がる一方だ。年をとって寝たきりになったら一体、誰が面倒を見てくれるというのか。老いるとは、仕事や地位、家族、健康などを失う「喪失のプロセス」である。その一方で、浮世のしがらみから解き放たれ、新しいことにチャレンジするチャンスでもある。老いを生きる男女の考え方や行動には、はっきりとした差がある。年を重ねるにつれ、女性はより積極的に、外向的になるのに対し、男性はより消極的に、内向的になる傾向がある。こうした差は、「男は仕事、女は家事育児、介護」という性別役割分業体制が生み出したものに他ならない。本書は男と女で老い方や老いの受け入れ方にどのような違いがあるかを明らかにするとともに男女の意識のズレや葛藤、要因などを社会学的な視点から分析し、解決策を探る「女と男の老年学」ともいえる。

財団報「新時代 New Way of Life」56号より