読んでみた

高齢者よ!立ち上がれ!

井上 哲雄著、1000円+税(コープ出版)

 今や国民の約4人に1人が65歳以上の高齢社会である。昔は、ある程度の年齢になれば家督を息子に譲り、子どもや孫に囲まれて悠々自適の老後を送ったものだ。しかし、それが、今はどうだろう。社会は核家族化し、介護も高齢者が高齢者を介護する「老々介護」認知症の人が認知症の人を介護する「認認介護」の時代である。高齢者の自殺も多発し、家族の虐待におびえる人もいる。何よりも国が高齢者に冷たい。無為無策の政策。悪評だった後期高齢者制度など「姥捨て山」の発想にほかならない。しかし、子育てを終え、定年を迎えた高齢者の意欲や能力も十分ある。成熟期を迎えた彼らの人生はこれからが本番といってもいい。阪神大震災に遭遇した著者。その被害の実態とその復興までの経験を200回にのぼる講演を通じ全国の人に伝えてきた。そこで、見たのは、地域で活躍する高齢者の姿であった。高齢者が頑張れば世の中を変えられる、高齢者が立ち上がれば、窮地に陥った日本を救える、と実感した。本書は高齢者に決起を呼びかける連帯の書である。

財団報「新時代 New Way of Life」57号より