読んでみた

楽天力

沖藤典子著、1600円+税(清流出版 )

 老いはだれにも等しくやってくる。自由の利かない身体、衰える脳。病気と隣り合わせの身には、家族との別れも待っている。老いることは寂しいし、時にはいたたまれない孤独感や焦燥感、えたいの知れない不安感にも襲われる。すべてを悲観的にとらえ、取り越し苦労の連続といってもいい。そんな時、くよくよする自分の心にストップをかけ、何事も前向きに考えようという意志の力が、筆者のいう楽天力だ。先の見えにくい世の中、生き難い時代だからこそ、楽天力が必要になる。本書は、つつましく老いを生きる人たちのエピソードを「生き方模様」「こころ模様」「介護模様」「人生模様」の4つの模様というくくりの中で描いたもの。泣けて、笑えて、心温かくなる、介護の現場のとっておきのいい話。本書を傍らに、楽天力をもっと磨き、老いを明るく生きていきたいものだ。

財団報「新時代 New Way of Life」59号より