読んでみた

認知症やひとり暮らしを支える 在宅ケア「小規模多機能」

土本亜理子著/1800円+税/岩波書店

 認知症になっても ともに老いて弱っても たとえひとり暮らしが心許なくなったとしても 介護や医療を受けながら できるかぎり自分の家で過ごしたい(本書より)。おそらく多くの人がそれを望んでいることだろう。その受け皿として誕生した介護サービスが「小規模多機能型居宅介護」だ。居間と食堂と宿泊室のある地域ケアの拠点。お年寄りの通いの場になり、通えないときは訪問してくれ、泊まりもできる。こんな「安心の場」なのに探してみると意外にない。なぜ増えないのか、その理由を知ろうと各地を訪ねまとめたのが本書だ。経営的に苦しいながらも奮闘していたり、地域の駆け込み寺的な存在になっている事業所、やりがいを感じている事業者。介護の現場の悩みと生きがいの息づかいが伝わってくる。

財団報「新時代 New Way of Life」64号より