読んでみた

億劫良の細道-精神科医ぼけて語る-

下山敦士著・絵/2000円+税/丸善書店 出版サービスセンター

 題名の「億劫良(おっくうら)」は筆者の短歌、俳句のペンネーム。山上憶良の名前をそのまま使うのは恐れ多いともじったが、億劫には無限の時間の意味もあるという。

 悠久の時間から見れば人生の喜怒哀楽は浮かれすぎず、苦悩の中にあっても救いを見つけたいという心構えを説く。

 著者3年ぶりのエッセーで、地元紙や「新時代」(コラム「診察室」)など3紙に連載の「心」にちなんだ約90編をまとめた。

 専門の心の健康問題から、美しい自然や素晴らしい人たちへの賛歌に至るまで、筆者の人柄がにじむような文章は心洗われる。

 表紙の絵(フランス、ヴェズレーの丘)を始め、約80点の絵はすべて著者の自筆。

2012年 財団報「新時代 New Way of Life」より