読んでみた

「わたし」の人生(みち) 我が命のタンゴ

和田秀樹著/500円+税/集英社文庫

 現役の老年精神科医が認知症介護をテーマに映画を撮り、その脚本をもとに書いた本。全国で順次公開中の同名の作品は娯楽色を出すことに気を遣ったが、本では専門医として「これだけは言いたい」と医療・介護面の紹介にもこだわったという。

 元ニュースキャスターの百合子が地元北九州で教授になったころ、父親が認知症になりその世話で奔走する。最初は何とかカバーしていたが、せっかく手に入れた仕事をやめざるを得なくなり、重いうつを患う。一方父親の症状は少しずつ進み、デイサービスでタンゴを習いはじめるが……。

 著者は在宅介護の限界を踏まえ、一人で背負いこまず、公的サービスの利用を勧める。制度の不備で必ずしも利用できない事情も触れつつ、どうしたら本人はもちろん家族が認知症と向き合って行けるかを考えていく。