読んでみた

若年認知症になった夫と生きぬいて  8000日の夜と朝

新井雅江著/800円(税込)/株式会社harunosora(090・6796・8989)

 最近でこそピック病は知られてきたが、まだ病気だと気付かない20年以上も前から夫の奇行や性格の変化に悩まされ続け、病名が分かってからも介護に苦しむ妻の8000日に及ぶ貴重な記録だ。

 夫は仕事熱心な営業マンだったが、11年3月に亡くなるその22年前に耳鳴りに悩まされ始める。そのうち仕事がうまくいかなくなり定年前の退職を迫られ、やがて万引きなど警察ざたを繰り返すようになる。耳鼻科、精神科、心療内科と渡り歩き、ピック病と診断されたのは7年後の95年。

 息子の前で壊れていく自分を悟られないよう演じる夫の姿は、なお父親でありたいと願う心の揺れをうかがわせ切ない。介護を通じて、著者はいま達成感と夫へのいとおしさに満ちているという。