読んでみた

脱「成長」戦略 新しい福祉国家へ

橘木俊詔、広井良典著/1900円+税/岩波書店(03・5210・4000)

 アベノミクスに代表される高い経済成長に価値を認めない著者2人による対談集だ。

 なぜ経済成長を求めないのか。それは福島原発事故が示すように資源の制約と環境問題が足かせになるから。また日本など先進国の人々は必ずしも経済的豊かさを求めてはいない。さらに少子化の日本で経済成長を進めれば日本人の働き過ぎは今以上に深刻にならざるを得ないからである。

 そこで選択すべきは社会保障や環境問題に配慮した定常型経済であるとし、その学問的根拠を明らかにしていく。ただ著者もまえがきで触れているが、安倍政権が勢いの強い時点では本書の主張は少数意見だろう。しかし長期的な視点に立てば「私たちの思想・主張は決して無視できないことを含んでいる」と読者が理解してくれることを期待する。徐々にそんな気配が広がっていないだろうか。