父の17回忌

関口祐加 映画監督

関口家のお墓がある公営墓地
=(C)NY GALS FILMS 2017

 4月16日は、父の17回忌でした。最愛の父が逝ってからもう17年もたったのかと驚きます。母には1週間ほど前から父の法要のことを話してきましたが、その度押し黙り、行くとは言いません。そして、話し始めてから3日目ぐらいでしょうか。「お寺に握りこぶし1つでは、行けない」と初めて理由らしきことを言ったので「大丈夫、関口宏子の名前でお布施を払うし、お塔婆も施主の大きなものを頼んだから」と返し

ました。それでも母は、浮かない表情のままでした。結局、当日も行く気は全くなく、そんな母に昼食を作り置きし、妹夫婦と一緒に出かけました。

 さて、お寺では、父の姉(伯母)の息子2人と久しぶりの再会となり思いがけず、楽しい<いとこ会>となりました。法要とお墓詣りの後、お寺での昼食では、なんと!介護の話で盛り上がったのです。伯母は、御年91歳。両股関節に問題があり(!)車椅子の生活です。さらに軽い認知症だそうで、要介護は5。独身の長男と一緒に住んでいますが、50代の独身息子に介護をされる…世間的に最も懸念されるパターンですよね? ところが、いとこである長男は、実に上手に伯母の介護の手配をしていたのです。

ご機嫌ナナメな母
=(C)NY GALS FILMS 2017

 まず、いとこは「おかん(伯母)は、息子に手を出されたくない」と言いました。まさしく!いとこには、冷静な観察眼がありますね。伯母の世話をしてもらうために1日に3回ヘルパーさんに来てもらっているそうです。そして、デイサービスへは1日置きに行き、入浴をして夕食を食べて帰宅。いとこは、仕事をやめることもなく、フルタイムのサラリーマンのままです。他にも伯母が昼夜逆転して夜を朝だと思った時には、説得せずに雨戸を開けて夜であることを見せるのが一番と言っていました。伯母は素直に「私は寝るしかないのか〜」と言うそう。皆で大笑いです。また、伯母は、長女で下に父、叔父と弟が2人がいたので、息子2人を弟2人だと間違えることもあるとか。私は、すかさず「父と叔父の役を演じて頂きたい」と言うと、いとこが「嘘(うそ)は、よくないんじゃないの?」と質問してきました。「嘘も方便。伯母の世界に入って一緒に共有することで、心が安定するのよ」と答えると、いとこは「なるほどね」と即、納得してくれました。すぐに話が通じることに驚きながら、いとこに関して言えば、男性介護は、難しいというのは当てはまらないと思った次第です。

 楽しいひと時をいとこ達と過ごして帰宅すると母は、思うところがあったのか、かなりご機嫌ナナメ。この母の感情の激しさは、認知症になる前からだと理解していますが、認知症後は、自分でも抑えが効かなくなっているのが見てとれます。母を通して、記憶と感情の相関関係についてずっと考えてきました。昨年10月、ファイナルの撮影のためにイギリスを再訪し、早速そのことについてヒューゴ・デ・ワール博士と話し合いをし、遂に合点がいきました。本当は新作の中で紹介するつもりですが、「新時代」の読者の皆さんには、少しだけ次号でご紹介したいと思います。乞うご期待!

2017年6月