コラム「母をみとる」

「毎アル総集編」DVD発売!

 2022年7月29日より、紀伊国屋書店さんを通して、「毎アル総集編」のDVDが発売になりました!感無量です。と言うのも、今回は、本当に新型コロナウイルスに翻弄された(ている?)2年間だったからです。上映会も講演会もキャンセルされていく中、以前にも書きましたが、私に出来ることは、映画製作しかありませんでした。

 横浜市の助成金と共に、皆さんの暖かいサポートを頂き、完成させたのが今回の「毎アル総集編」だったのです。副題にもあるように「認知症ケアにおけるパーソン・センタード・ケアとは」という、私にとっては認知症ケアには欠かせないコンセプトとアプローチを25分弱にまとめた短編ドキュメンタリー映画です。

 私にとっても、改めて母に対して行ってきたケアを直視し、再考するいい機会になりました。今回のDVDは、上映権つきですので、従来の「毎アル」シリーズのDVDよリもやや高めの値段設定にはなっていますが、ぜひご購入を検討頂き、地域や、学校、施設等で上映後に話し合いをして頂けたら、こんなに嬉しいことはありません。ご連絡は「毎アル」友の会事務局まで、よろしくお願い致します。

 さて、「毎アル総集編」の宣伝はこのぐらいにしておき、6月30日に最新作「毎アルスピンオフ」の撮影のため、再度松山市の託老所「あんき」へ行ってきたことを書きましょう。実は、この日は、施設長の中矢暁美さんの最後の日だったのです。

 中矢さんは、在宅のまま、母が望んだように逝ったことを話した時に「おめでとう!」と言ってくれた唯一の人です。中矢さんの「おめでとう」という言葉に心より安堵したことを覚えています。<最期の逝き方>は、本人の意思(希望)とそれを叶(かな)えようとする家族の気持ちと行動が、マッチングしてはじめて可能になる人生最期の大イベントだと中矢さんからも常々聞いていました。

 久方ぶりの「あんき」は、全く変わらず、ゆったりとした時間と風が流れていました。もちろん、鍵などつけず開けっぱなしです。ここに一歩足を踏み入れると、「あんき」の世界に吸い込まれていくようです。中矢さんは、私にお年寄りと一緒にアクティビティに参加して、と言ったので、空いている席に腰かけました。そして、皆さんと一緒にベルを降りつつ、大きな声で歌いました。「相変わらず馴染んでいるわねえ」と中矢さん。

 大袈裟に言えば、認知症という壁を超えて、ひとりの人としてお付き合いをするという気持ちでしょうか。そんな私の気持ちに敏感に反応してくれたのは、お年寄りの方で、すっと受け入れてくれました。認知症の人の世界にお邪魔する。これがひと言で言うパーソン・センタード・ケアかも知れませんね!

 「毎アル総集編」は、完成しましたが、私の認知症ケアのあり方の探求は、まだまだ続きます。今も撮影が続いている新作「毎アル・スピンオフ」では、認知症ケアよりも更に大きく人生におけるパーソン・センタード・ケアな生き方を探ってみたいと考えています。

2022年8月