家族の会だより

正しい理解「備え」の第一歩

認知症の人と家族の会理事
河合雅美

 平均寿命が延び、長寿大国となった日本。医療の進歩により、元気で長生きできることは素晴らしいことですが、一方で「老化」とも上手(うま)く付き合いながら暮らしていかなければなりません。

 目の衰えを感じたら眼鏡、血管が硬くなれば服薬治療など、対策できる老化現象はたくさんあり、私たちの健やかな暮らしを可能にしています。

 一方、認知機能の低下は今のところ道具や薬剤で改善することができません。2025年に高齢者の5人に1人が認知症になるという試算もあり、認知症をもって生きることを自分ごととして考える時期にきています。

 認知症をもつ母の人生に伴走した経験から、「認知症のこと」を知っておくことは非常に重要だと思っています。認知症と診断されたら「人生終わり」というイメージがまだまだあるようですが、認知症になったからといって人生は終わりではありません。認知症と上手く付き合うことで、やりたいこともできるし楽しく暮らすこともできます。

 家族も肉親が認知症と診断されたら「何も分からなくなる」と心配になりがちですが、認知症と医師から告げられたからといって何もできなくなるわけではありません。認知症との付き合い方を知っておくために、「認知症に備える」ことが大切です。

 備えることの第一歩は、認知症について正しく理解することです。最近は、認知症の方による発信も多くなりました。これらを聴くことで認知症に備えることになります。何より認知症のイメージが変わります。認知症の人の家族や周りの人が、認知症について正しく理解することが本人支援につながります。また、認知症の人や家族の暮らしの中での工夫について知っておくこと、地域とのつながりも大切です。困ったときに助けを求めることができるように地域のサポートネットワークも確認しておきましょう。

 認知症の人と家族の会理事 河合雅美

2024年4月