トピックス

盛岡シンポ パネルディスカッション

プログラム
基調講演
「東日本大震災と認知症〜その経験を明日に生かすために」 高橋智氏(岩手医科大学准教授)
特別講演
「高齢者に配慮した被災地でのまちづくり」 小泉秀樹氏(東京大学大学院准教授)
パネルディスカッション 「震災と認知症」
回答者 石田知子氏(県長寿社会課高齢者福祉担当課長)
内出幸美氏(介護老人福祉施設「ひまわり」総所長)
小野寺彦宏氏(認知症の人と家族の会岩手県支部代表)
助言者 高橋智氏
進行役 高橋宏昇氏(岩手日報社論説委員)
パネルディスカッション

 高橋宏 まず震災後どのように対処してきたのか、各パネリストからのご報告です。

 内出 施設に避難してきた地域の方が認知症の人の介護を手伝ってくれました。介護を実体験していただいたのが大きい。寝食を共にし地域のつながりを再確認しました。

 高橋宏 続いて小野寺さん。地震の時は久慈におられたそうですね。

 小野寺 津波前は互いに行き来していたお年寄りが仮設に入って孤立し認知症が進行しています。一般住宅に移った時どうしたらいいか悩んでいる人が多いと思います。

 高橋宏 県の対応についてお聞きします。

 石田 高齢者の孤立化防止や仮設での高齢者同士の見守り活動も取り組みたいと思っています。介護予防教室の開催支援や生活便利帳の作成、世代間交流フェスタ開催等を予定しています。

 高橋宏 ここから、参加者から寄せられた質問に答えていただきます。震災後、認知症患者にどのような変化があったのか、内出さんお願いします。

 内出 スタッフが動揺して右往左往していると、それがお年寄りに伝わります。逆に周りにいる者が落ち着いていると、大変な状況になるということはなかったです。

 高橋宏 震災時、どうお声掛けしたらいいかという質問。これは高橋智先生に。

 高橋智 認知症の方は相手の言葉を理解することが苦手ですが、笑顔を感じとることは上手です。認知症が進んでいても、介護する方が笑顔なら安心感を持たれます。

 高橋宏 周りの方が落ち着いていれば特別な対応は必要ないということでしょうか。

 内出 そうとも言えません。私の施設は震災モード漬けで、買物にも行かず支援物資を待ちました。それはお年寄りにも影響します。それで普通の生活に戻ろうとしました。

 高橋宏 仮設について県の対応をお聞かせください

 石田 市町村の機能が回復するまでの間、県の方で支援していきたいと思います。

 高橋宏 小野寺さん、仮設から自立する時が一番大変と言いましたが、具体的には?

 小野寺 認知症とも呼べないで暮らし続けることができる人が仮設に入って環境が変わり孤立化することがあります。自立したらどこに住むのか、自立できるのかという不安をどうケアしていくか、心の問題と金銭の問題でもあります。大きな課題だと思います。

 高橋宏 孤立しないよう見守り体制をどう再構築していくか、高橋先生のお考えは?

 高橋智 震災によって様々な問題点があぶり出されています。たとえば孤独死だったりウツだったり。認知症も社会にある問題のあぶり出しの役割をしているだけ。本当の問題というのは高齢化だったり、地域コミュニケーションの崩壊だったりする。被災地は大変と思うかもしれませんが、実は地域コミュニケーションがよく保たれているところです。そこが今お茶飲み友達がいなくなり、近くに買物に行ける店がなくなった。実は盛岡や東京では当たり前のことなんです。30年後には認知症の方は2倍になるといわれています。ですから今回言われていることが30年後に盛岡に確実にくる。そのためには、どうやって高齢化社会を乗り切れるかを考えながらサポート体制を作っていくことが大事です。

 高橋宏 今日は「震災と認知症」ということですが、これをかみ砕いて言いますと地域コミュニティーづくりをいかにやるべきかということになるかと思います。全国に発信するテーマにもなったかと思います。長時間ありがとうございました。

2012年1月