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「毎日がアルツハイマー2」東京で公開

初日から大盛況
本人尊重 英国のケア学ぶ

 認知症になった母親宏子さん(83)にカメラを向け、その喜怒哀楽をユーモアあふれるタッチで描いた前作に続き、その後を描いた「毎日がアルツハイマー2」が7月19日に東京で公開された。初日は満席で立ち見が出る大盛況。トークイベントも立すいの余地もない混雑ぶりだった。

「毎日がアルツハイマー2」の一場面(c)NY GALS FILMS

 認知症のことを知れば知るほど老いた母親の最終章が気になってきた監督は、ケアの大切さを実感し、もっと本格的に学びたいとイギリスへ飛ぶ。そこで目の当たりにしたのが、イギリス最先端の医療介護施設である「認知症ケア・アカデミー」における理論と実践だった。

 映画の中で「認知症ケア・アカデミー」施設長のヒューゴ・デ・ウァール博士は「認知症という病名は同じでも、必要なケアは一人ひとり全く異なります」と力説する。なぜならば病気がアルツハイマー病なのか脳血管性障害なのかという認知症の原因疾患だけでなく、既往歴など本人の健康状態や趣味、職歴といった個人史、性格、さらに周囲の人間関係など社会心理学的な要因まで一人ひとり違うため、その人らしさを尊重しその人の視点や立場に立って理解しないと適切なケアは引き出せないというのだ。

 これが「パーソン・センタード・ケア」と呼ばれる考え方で、トム・キットウッド教授(故人)が提唱しイギリスでは高齢者サービスを行う際の国家基準に採用されている。

「毎日がアルツハイマー2」の一場面(c)NY GALS FILMS

 映画の中でも、イギリスのケア・ホームで暮らす女性が夕方になると動揺するケースで、スタッフは上記5つのアプローチをもとにその人の背景を探り出し、彼女にふさわしい対応を見つけていく姿が感動的に紹介されている。

 ヒューゴ・デ・ウァール博士は「ここでは簡単に抗精神病薬は使わない」と話す。認知症の人を、世話をする側の都合ではなく、あくまでも本人の立場で見ていこうという姿勢を強く感じるお話である。

 さて、前作「毎日がアルツハイマー」で主役を務めた監督の母親、宏子さんは、続編の「毎アル2」でも元気いっぱい。引きこもりで行けなかったデイ・サービスに週3回行くまでになり、時には買い物も。遠慮はないが優しさに満ちた母子の会話は、相変わらず笑いのツボがいっぱいだ。前作では認知症のイメージをがらりと変えて見せた監督が、そのテイストを維持しながらケアの神髄を自ら学び、じっくり見せようとする。

 「毎日がアルツハイマー2 関口監督、イギリスへ行く編」は8月8日までポレポレ東中野で公開。その後は名古屋、大阪と順次上映していく。問い合わせはシグロ(03・5343・3101)へ。

2014年8月