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介護保険 06年に続く制度改定

内容 より複雑に

デイサービスを利用するお年寄り。介護保険の見直しで利用者、介護者への影響が予想される

 今年6月、通常国会で「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」(地域医療・介護確保法とも略称される)が成立した。2006年改正に続く大きな制度改定で、利用者や介護者に与える影響は大きい。改定制度は来年度から段階的に施行され、第6期(2015〜17年度)のサービス料金(介護報酬)の改定ともセットになるため、細かい点については修正が行われることもある。また、市区町村条例による3年間の猶予、経過措置期間もあるため、見直し内容はより複雑になりそうだ。

 介護保険は最初からわかりづらい制度だった。加えて二度にわたる介護保険法の改正、3年ごとの介護報酬の改定を重ね、スタートから14年余りでさらに複雑なものになった。そして今回は消費税の引き上げに伴う「社会保障・税一体改革」の政府方針に基づいて、一層理解するのが大変な見直しを行われた。

 介護保険のサービスは、介護保険料を払っている被保険者だからといって、すぐに使えるわけではない。市区町村の介護認定を受けて、ケアプラン(サービス計画)を作り、事業所と契約して、初めてサービスの利用にたどり着く。サービスには、在宅と施設のほかに、市区町村が指定する地域密着型サービス(認知症の人に対応するグループホームや小規模多機能型居宅介護など)がある。在宅サービスには、有料老人ホームやケアハウスなど都道府県や市区町村から指定を受けた「特定施設」で提供されるサービスも含まれる

 わかりづらい見直しを理解するため、「もっと変わる!介護保険」(小竹雅子著、岩波ブックレット)を基に、改定の主なポイントを説明したい。

 【介護保険料】所得の低い人の第1号介護保険料(65歳以上)の負担を軽減する。第1号保険料は、保険者である市区町村ごとに「基準額」を決めて、本人の所得に応じた負担段階(標準6段階)を設定している。改正では、負担段階を9段階まで増やし、もっとも低いケース(第1号被保険者の約3割)では3割(現行5割)まで負担を引き下げる。一方、年収が190万円以上の人はこれまで基準額の1・5倍の負担だったが、新段階の第9段階では1・7倍に引き上げられる。

 【利用料】「一定以上の所得がある人」の利用料を2割に引き上げる。施設サービスの居住費・食費(自己負担)の補足給付(低所得の人への負担軽減対策)を厳しくする。「一定以上の所得がある人」とは高額所得者のことではなく、65歳以上の第1号被保険者の上位2割に当たる「相対的に負担能力の高い人」である。1人暮らしで年収280万円、夫婦で年収359万円以上が線引きとなる。

 【ケアプラン】市区町村に「地域ケア会議」を開くことを努力義務とし、個別ケアプランをチェックする。

 【介護予防事業】自立(非該当)の人だけでなく、要支援1、2の人も介護予防事業の対象にする。

 【在宅サービス】要支援(1と2)のホームヘルプ・サービスとデイサービスをサービス(予防給付)から外して、市区町村の総合事業(地域支援事業)に移す。小規模なデイサービスは、在宅サービス(都道府県指定)から地域密着型サービス(市区町村指定)に移す。

 【施設サービス】特別養護老人ホームの利用を、要介護3以上の人に制限する。

 【サービス付き高齢者向け住宅】 住民票は自宅に置いたままで、別の市区町村のサービス付き高齢者向け住宅に暮らしている人が、その市区町村の地域支援事業や地域密着型サービスが利用できるように「住所地特例」の対象にする。

 【居宅介護支援事業所】ケアマネジャーが所属する居宅介護支援事業所を、都道府県から市区町村の指定に移す。

2014年10月