認知症予防シンポジウムの2014年度報告書「認知症と向き合う」が3月1日に発売された。今回のサブタイトルは「アルツハイマーと映画」。昨年10月10日、高知市内のシンポジウム会場で特別上映された関口祐加監督の「毎日がアルツハイマー2」を監督の独白(ナレーション)も含め全文起こしたスクリプトや、作品を医学監修した順天堂大学大学院の新井平伊教授と監督との爆笑トークショーまで一字一句欠かさず盛り込み、映画をとことん堪能し認知症のありのままを理解する“決定版”に仕上がった。
報告書はアフラックの協力で93年から毎年2〜3か所開催している地域連続シンポジウムの基調講演や特別講演、パネルディスカッション、質疑応答などのすべてを同時録音し、これを基に編集して各年度ごとに全文を掲載している。
関口監督と新井教授は過去にも講師として参加しているが、今回は映画の無料上映付きで、見たばかりの作品を監督本人が解説し、その後のトークショーでは医学的観点からの考察が次々となされるので、見て考えさせられ、聞いて分かりやすいという理想的な構成のシンポジウムとなった。
本書は、このシンポジウムで上映した「毎日がアルツハイマー2」に加え、前編に当たる「毎日がアルツハイマー」も合わせて全文起こした会話を通じて再現し、トークショーでは撮影中の監督の心の内や、映画ファンの1人でもある新井教授ならでは映画に描かれがちな認知症についての批判まで紹介されている。映画を通じて、また認知症を見る目が豊かになることを教えてくれる内容になっている。
このほか監督が財団報「新時代」に連載しているコラム「母を撮る」から「関口家の4人の孫」や「股関節脱臼のこと」「毎アル3を作る意味」を転載し、映画には出てこない孫も含め、彼らの存在が母の生活を豊かにしている様子を紹介。さらに新井教授が11年7月に参加した沖縄シンポジウムの「アルツハイマー型認知症の医療と予防」と題した講演なども再録し、認知症研究の現状や認知症になっても幸福感を持って暮らせる社会を創ることの大切さについての話も紹介している。
映画1、2に登場する映像写真を中心に計60枚の写真やイラストがほぼ各ページに掲載され、見るだけでも楽しい。
1部1000円(税込み)。問い合わせは本財団(電話03・3216・4409)へ。
2015年3月