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高齢者の運転 注意点は

 高齢者ドライバーによる交通事故は、長年の経験による慣れや身体能力の衰えが影響していることが多い。自動車保険大手の損保ジャパン日本興亜は、蓄積した事故データ分析から高齢者が起こしやすい事故のタイプを示し、注意を呼びかけている。事故を避けるためのポイントをみた。(2015年11月11日付け毎日新聞朝刊の記事を要約)

●一旦停止し直接黙示

 高齢者は一般に、安全運転の意識は高いが、運転経験による慣れが注意不足を生みやすい。また、加齢により、視野が狭まったり、急な動きに反応しにくくなったりするなど身体能力が衰えつつあるものの、本人は自覚しにくい傾向がある。同社は、こうした点が事故に結びついているとして、注意点をまとめた安全運転の手引を作成し、保険代理店などで配布している。

 年代別の事故発生率(保険契約に対する事故の割合)について、高齢者(70〜80代)が40〜50代の何倍あるかを比較すると、最も多いのは、駐車場などのバック時の接触事故で2・1倍に及ぶ。駐車場内での事故の約8割はバック時に発生していた。  高齢者はミラーや感覚に頼ってバックしやすく、バック中に安全確認する傾向がある。だが、バック時は視界が狭まりやすく、注意不足から思わぬ接触事故につながりやすい。面倒でも、一旦停止し、直接目視して安全確認すると事故防止には効果的だ。

●優先道路でも慎重に

 2番目に多いのは交差点などで右折時の事故(2倍)。対向車に気を取られがちだが実際には対向車以外との事故が約8割に及び、同じ方向に進む歩行者を見落としやすい。

 対向車だけでなく、その死角や右折先などをバランスよく安全確認することを心がけたい。最短距離で右折しようとすると、歩行者などに気づきにくいため、無理せず大きくゆっくり右折することが大切だ。

 3番目は直進時の出合い頭事故(1・5倍)。見通しの良い道路でも脇道から飛び出してきた自転車などと衝突するケース。反応が衰えていることを自覚し、優先道路でも加速せず交差点の手前でアクセルから足を離し、すぐブレーキを踏めるよう心がけたい。

●加齢を自覚しよう

 今年6月の道路交通法改正では75歳以上の人は免許更新時の検査で認知症の疑いがあると判定されれば、医療機関での受診が義務付けられるなど、認知症対策は強化されている。だが一方で、仕事や趣味に活発なアクティブシニアも多く、また、移動手段として自動車が必要な地域も多い。手引の作成に関わった同社自動車業務部の伊藤清高・特命課長は「油断せず、加齢を自覚することで事故を避けることはできる。安全に楽しいカーライフを送ってほしい」と話す。

車庫入れに時間かかる/ウインカー左右間違え
それ、認知症かも

 高齢者の運転をめぐっては鳥取大学医学部教授の浦上克哉先生も講演などでしばしば発言している。同教授が挙げる認知症の傾向が見られる高齢者の見分け方は以下の通りだ。

 ①駐車や車庫入れに時間がかかる②車のボディーに記憶のない傷やヘコミがある③運転中無口になる(同時に二つのことができないためです)④車の鍵の置き場がわからない⑤右と左のウインカーを間違える⑥いつも走っている道なのに迷ってしまう。

 こういう時は、家族は運転を続けさせていいかどうかよく考えた方がいいと言う。中には冷静に判断して免許証を自主返納している人もいるが、どうしても運転を続けたいという場合は、何か異変があると感じた時に、早めに診断を受けるよう勧めることが重要と強調する。

 一方、同教授は認知症の「タイプ別」と「重症度別」に認知症かどうか見分ける表を作成している。

 「タイプ別」で見ると、アルツハイマー型の場合は車をぶつけたりこすることが増え、車庫入れがしにくくなるのもチェックのポイント。レビー小体型は駐車スペースにまっすぐいれたつもりでも曲がることが増える。また前頭側頭型では赤信号を無視するなど交通ルールを守らなくなるという。

 また「重症度別」で見ると、車のキーの置き場所を忘れるようになったり、走ったことのあるルートでも迷うことがあるのは軽度の認知症の疑いがある。さらに前進とバックのAT操作を間違え壁にぶつかる▽ウインカーの操作で左右を間違える▽ワイパーやライトのスイッチの使い方が分からなくなった▽目的地までのルートを思い出せない▽右に寄ったり左に寄ったりして、道路の中央を走れなくなった--などは中等度以上の認知症の疑いがあるという。

 本人が専門医に行きたがらなければ家族が説得するしかないが、そんなときに利用すると効果的な道具としてドライブレコーダーを勧めている。運転中や事故が起きた時の映像を自動的に記録する装置で、「もらい事故が起きた時に付けておくと安心だから」と言えば、納得してもらえるという。この映像を一緒に見ながら、そろそろ卒業をと説得することを提案している。

2016年1月