当事者主義 できること奪わないで
豪州政府元高官 クリスティーン・ブライデンさん(68)

 今会議には「当事者主義」を切り開いてきた豪州政府元高官のクリスティーン・ブライデンさん(68)も参加した。4月29日の会議で「外から見た日本の変化」をテーマに発表後、毎日新聞の取材に応じ、「引き続き、認知症とともに生きる専門家である当事者の声を聞いてほしい」と訴えた。

 豪州の首相内閣省第1次官補として首相に科学技術を助言する立場だった1995年、46歳でアルツハイマー病に。人の名前やスケジュールを覚えられず、娘たちを送迎する道も間違えた。

 「指をなくしたピアニストのよう」。2年ほど失意の底で過ごしたが、同じ病気になったレーガン元米大統領(故人)をからかう新聞記事を目にしたことや、豪州の支援団体に「当事者向けのプログラムはない」と言われたことで、気持ちが駆り立てられた。

 支援の中心に本人を置くようADIに提言し、当事者として初めて理事に就任。堂々と意見を言う姿に「病気を装っている」と疑われたこともあったが、「世界をもっといい場所にしたい。変革の遺産を残したい」と偏見に立ち向かってきた。

 現在、夫のポールさんが「イネーブラー」(後押しする人)として日常を支える。スマートフォンで予定を共有するなど、スムーズに生活を送るための工夫をする一方、「認知症は私のごく一部に過ぎない」と強調。支援者へは「その人が何を求めているか全身で見てほしい。(本人が)できることを取り上げず、手助けして」とアドバイスした。

 認知症をめぐる日本の取り組みについては「行政と当事者や家族、専門家らの協力体制があり、他国にはない社会の変化を遂げている」と評価。「さらに(当事者が置かれている)状況を改善してほしい」とエールを送った。

2017年6月