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注目の新薬 治験は最終段階

 認知症の原因の5〜7割は、脳内で不要なたんぱく質が蓄積して脳が萎縮するアルツハイマー病とされる。脳卒中など脳血管障害が原因の「血管性」は15〜20%、幻視を伴うことが多い「レビー小体型」も5〜20%を占め、合わせて「3大認知症」と呼ばれる。いずれも根治する治療法は見つかっていない。

 一方、元の病気を治すと治癒する認知症もある。脳脊髄(せきずい)液が脳内にたまる正常圧水頭症や、頭部を打った後に脳の外側に血がたまる慢性硬膜下血腫などで、いずれも脳が圧迫されて物忘れなどの症状が出る。脳腫瘍や甲状腺機能低下症も、同様の症状を伴うことがある。

 最近の研究では、多くの老年期認知症患者がアルツハイマー型と血管性との「混合型」だと判明。このため国立循環器病研究センターのグループは、血管を拡張させる働きのある脳梗塞(こうそく)の再発防止薬「シロスタゾール」に注目。アルツハイマー病の原因とされる不要たんぱく質「アミロイドβ(ベータ)」を排出する働きを実験で確認した。現在は軽度認知障害の患者を対象に、十数病院と協力して治験を実施している。

 認知症治療薬は、国内では「ドネペジル」など4種が承認されている。いずれも脳内の神経伝達を制御してアルツハイマー病の進行を遅らせるが、大きな改善効果はみられない。

 そんな中、米製薬会社が開発した「アデュカヌマブ」が注目されている。抗体を利用した新薬で、脳内で凝集したアミロイドβと効率よく結合して除去する。

 現在、最終段階の治験が実施中で、厚生労働省は4月、優れた新薬の早期実用化を目指す審査制度の対象に認知症治療薬として初めて指定した。

2017年6月