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介護職69万人不足か

 厚生労働省は2040年度時点で必要となる介護職員数が約280万人に上るとの推計結果を公表した。19年度の実数は約211万人にとどまっており、このままでは20年後に約69万人の介護職員が不足するとしている。ただ、人手不足の一因とされる介護職の賃金の低さは大きくは改善されていない。

 介護職員の必要数に関し、厚労省は特別養護老人ホームなど介護サービスの利用者数に基づいて都道府県ごとのデータを集計した。戦後ベビーブームの「団塊の世代」が全員75歳以上になる25年度は、約243万人の介護職を要するとしている。

 介護職の人手不足の要因としては、多忙さとともに賃金の低さが挙げられている。20年度の常勤介護職員の平均月額賃金(20年2月時点)は、キャリアを積んだ職員を対象に国が19年10月に新設した介護報酬「特定処遇改善加算」を取得している事業所で31万5850円だ。1年前より1万5730円増えたものの、産業全体平均の42万5000円(19年度調査)に比べると依然開きがある。

 同省が進めてきた給与改善策のうち、事業所全体の賃金底上げを目指す一般的な「処遇改善加算」は93・5%の事業所が取得していた。しかし、ベテラン職員の給与アップを目的とした特定処遇改善加算は58・7%と4割以上が受けていない。同加算の中でも高い技能を持つ職員1人以上の月収を8万円増とするか、年収を440万円超とする制度を実施したのは48・9%にとどまり、33・5%は「(対象者を)設定できない」とした。特定処遇改善加算を取得しない理由を尋ねたところ、「職種間の賃金バランスがとれなくなる」「事務作業が煩雑」との答えが4割ずつ(複数回答)を占めた。

 これまで国が進めた処遇改善策により、08年度と比べた介護職全体の平均月額賃金は約7万5000円増えている。ただ、特定処遇改善加算を得ていない事業所の平均額は、20年度調査でも対前年比9120円増の28万7880円。また、一般の処遇改善加算を取得している事業所で働く時給制・非常勤の職員は、5750円増の11万2500円となっている。

2021年8月