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歯が少ない人、欠損歯の多い人 アルツハイマー病の危険性高く/日本歯科総合研究機構調べ

 日本歯科医師会の研究機関「日本歯科総合研究機構」(堀憲郎機構長)は、歯科を受診した60歳以上の人約467万人を対象に歯の数とアルツハイマー病(AD)の有無の関連を調べた。その結果、年齢や性別による影響を除外しても、歯の数が少ない人、欠損した歯の数が多い人ほどADになる危険性が高いことが分かった。

 調査対象は2017年4月に歯周炎で歯科にかかった人約401万人と、歯の欠損で受診した約66万人。健康保険の請求情報などを集積した行政データベースから抽出した。

 歯周炎で受診した人の場合、ADと診断されている人の割合(AD率)は全体の3・02%だった。ただ、残存する歯の数別にみると、20~28本残っている人(約248万3000人)では1・95%なのに対し、10~19本の人(約106万6000人)では3・87%に増え、1~9本しか残っていない人(約46万人)では6・86%に上った。

 歯の欠損で受診した人のAD率は3・68%だった。失った歯の数が1~13本の人(約47万人)では2・67%だったのに対し、14~27本を失った人(約15万5000人)では5・51%、28本の永久歯すべてが無い人(約3万7000人)では8・70%と、歯が少ない群ほどAD率が高かった。

 AD率は高年齢層ほど高く、女性が男性を上回っていた。しかし同機構によると、年齢差や性差を補正しても歯の数とADの発症には関連が見られた。認知症になり適切な口腔ケアができなくなったために歯を失った例もある一方で、歯の数の少なさがADの原因となった例もあることを示唆しているという。

 歯が少ない人は食べる時に十分かむことができない。咀嚼による脳への刺激が減ると、脳が活性化しにくくなるとの研究もある。また歯が少ないと生野菜など硬めの食物を避けるようになり、脳に必要な栄養素が不足しがちとなる。これらにより、認知症になる恐れが高まる可能性があるという。

 解析には歯の喪失とAD双方のリスク因子とされる喫煙や糖尿病の有無などは考慮されていない。歯が健全な人も含まれず、同機構は日本の高齢者に一般化することはできないと説明している。

2021年8月