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東京・豊島区 聞こえ具合をアプリでチェック 難聴、認知症を予防

 東京都豊島区は65歳以上の人の耳の聴こえ具合を専用のアプリで調べ、要注意の人を医療機関につなげる「ヒアリングフレイルチェック」に取り組み始めた。聴力の衰えは人との会話がおっくうになるなど認知症の危険因子とされる。聴力低下の早期発見とともに、重度化防止のアドバイスや補聴器購入時の助成などの対策によって難聴や認知症を予防することを目指している。

 同区はごく小規模な自治体を除けば、75歳以上の独居率が全国一だ。人と会わず、孤立するなかで身体が弱って要介護手前の状態(フレイル)になるお年寄りも少なくない。そこで区は3年前からフレイル対策を始め、栄養や口腔(こうくう)ケアなどの専門家による巡回指導、社会参加の促進や区独自の介護予防体操「としまる体操」の普及に力を入れてきた。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛もあり、同区のフレイルを懸念される高齢者の割合(全国平均約15%)は2019年度が21・2%だったのに対し、20年度は33・6%に増えた。

 一連のフレイル対策メニューに、今年7月から加わったのがヒアリングフレイルチェックだ。社会参加への妨げともなる難聴は、認知症になる原因の一つと指摘されている。難聴の人に必要以上に大声で話すと、心理的圧迫となって『聴こえたふり』をさせてしまうなどの問題もあるため、同区は区民、区在勤の65歳以上の人の「聴こえ支援」に乗り出した。

 希望する人は予約のうえ各地の区民ひろばなどを訪れる。担当者の導きでタブレットのアプリが発する20の発語(単音)をクイズ形式で聞き、正確に聴き取れたかどうかを点検してもらう。正答率が60%未満の人には地域の耳鼻科への受診を促しており、おおむね3割程度が該当するという。

 取り組みは始まったばかりでまだ目に見える成果はないものの、区民からは「何となく聴こえが悪くなったと思っていたが、高齢だからと放置していた」「難聴が認知症や身体に影響を及ぼすことを初めて知った」といった声が寄せられている。区高齢者福祉課の岡崎真美課長補佐は「聴こえの低下はじわじわ進行するので気付きにくい。ヒアリングフレイルチェックを通じて早期発見につなげていきたい」と話している。

2021年10月