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「カルタと思い出ノートで花咲く思い出話」

 実践女子大と毎日新聞社によるによる高齢者向けの健康増進講座「カルタと思い出ノートで花咲く思い出話」が2021年10〜11月、東京都日野市で4回開かれた。1回目の10月14日には67〜88歳の市民16人が参加し、認知症の非薬物療法、回想法をベースに毎日新聞が制作した「思い出ノート」を使う自分史の作り方を学んだり、実践女子大生が考案した「多世代交流カルタ」の使い方を教わったりした。

 実践女子大は日野キャンパスがある日野市で、学生がお年寄りや子どもと手作りカルタを楽しむ催しを開いている。こうした多世代交流を全国に広げることを目指しており、7月に毎日新聞と共同で社会貢献事業に取り組む包括契約を結んだ。今回の講座はその第1弾で、日野市の協力を得て14日、28日、11月11日、11月25日の計4回開いた。

 初日の14日は「写真の思い出」がテーマ。男性4人、女性12人の参加者が4人ずつ四つのテーブルに分かれ、同大の学生7人もサポーター役として同席した。参加者は認知症の基礎知識を学んだ後に「思い出し方講座」を受け、持ち寄った写真や主催側が用意した古い写真を見ながら、写った人や物にまつわる思い出を語り合った。

 鯨肉がおかずになっている昔の給食メニューの写真が出てくると、「私たちの時は当たり前だったのに。今は貴重だからねえ」。瓶入りの牛乳の写真には「オレたちのころ牛乳なんてなかった。脱脂粉乳でまずくてね」といった声が飛び出し、講師の話が聞こえなくなるほど懐古談でにぎわった。

 続いて実践女子大現代生活学科4年の輿石茜さん(22)が講座で使う多世代交流カルタについて説明した。同カルタは現代生活学科などの学生が高齢者や子どもの思いを捉えた読み札を考え、取り札を美学美術史学科の学生などがデザインしている。

 同カルタは4種類あり、その一つが「相詠みかるた」だ。高齢世代と若者世代の思いが対になっていて、輿石さんは男女が連絡を取り合うときの今と昔の違いを描いた札がお気に入りという。

 ダイヤル式の黒電話を使っていた高齢世代の読み札は「もどかしい ダイヤルもどるの はやくして」。一方、若者世代の札は「へんじなし まちじかんさえ いとおしい」で、輿石さんは参加者に「私たちの世代はラインを使うことが多いですが、青春時代の思いは世代を超えて共通なんですね」と語りかけていた。

 講座に参加した桜井尚子さん(83)は広島県呉市の出身。国民学校時代の思い出や、疎開先で原爆を落とした米軍機を目撃したことなどを語るうち、先生の名前など当時の記憶が芋づる式によみがえってきたといい「思い出話をする機会などそうそうなく、とても楽しかった」と話していた。

2021年12月