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アデュカヌマブ承認見送り 厚労省

 厚生労働省の薬事・食品衛生審議会の部会は昨年12月、米国で仮承認されたアルツハイマー型認知症(AD)治療薬「アデュカヌマブ」について承認せず、継続審議とした。ADの原因物質とされる異常たんぱく質、アミロイドβ(Aβ)を脳内から除去することを狙った薬だが、Aβの減少と認知症の進行抑制の因果関係が明確でないことなどを理由に承認を見送った。

 アデュカヌマブは米・バイオジェンと日本のエーザイが共同開発した。ADは脳内にAβが20〜30年かかってたまり、神経細胞を破壊することによって発症する説が有力だ。両社は開発に際して2つの臨床試験を実施し、Aβの量に関してはいずれの試験でも一定程度の減少がみられた。

 ただ、症状の進行については食い違いが生じた。一方の試験では22%抑制できたのに対し、もう一つの試験では効果が認められなかった。

 この結果を踏まえ、同審議会は㈰二つの臨床試験結果に一貫性がない㈪Aβの減少と進行抑制の因果関係が不明確㈫脳の浮腫などの副作用——の3点を挙げ、継続審議とした。

 アデュカヌマブを巡っては、米食品医薬品局(FDA)が昨年6月、一定期間内に効果が認められない場合は承認を取り消すとの条件付きで承認している。ADの「Aβ原因説」を有力視し、薬によるとみられる脳内のAβの減少を一定程度評価した格好だ。

 これに対し、欧州医薬品委員会(CHMP)は昨年12月、二つの臨床試験の矛盾を重視して申請を却下しており、欧州と米国で対応が分かれた。日本は追加の臨床試験で効能を示すことを承認の条件とする考えで、再審議までに数年を要する可能性があるという。

2022年2月