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オンラインの公開講座「いきいき健脳をつくる」を開催

 一般社団法人「生涯健康社会推進機構」(理事長・金指潔東急不動産HD会長)と認知症予防財団共催の公開講座「いきいき健脳をつくる」(後援・毎日新聞社)が3月11日、オンライン形式で開かれた。視聴者は新井平伊・順天堂大名誉教授らの講演に耳を傾けるとともに、運動や音楽を活用した認知症予防につながるプログラムを体験した。

 講座は新井氏が監修する認知症予防カフェ「健脳カフェ」(東京・四谷)からライブ中継で開かれた。最初に新井氏が「可能になってきた認知症予防」と題して講演した。認知症に関し発症を遅らせる2次予防、発症後も進行を遅らせる3次予防が可能になってきたことがポイントだと指摘した。

 2、3次予防ができるようになった理由については、生活習慣病を中心とするアルツハイマー病(AD)危険因子の判明、ADの前段、主観的な認知機能低下(SCD)や軽度認知障害(MCI)の段階で脳内に変化が起きているのが分かってきたことを挙げた。

 ADは脳内に原因物質とされるアミロイドたんぱく(Aβ)などが20〜25年かけてたまった末に発症するとされるが、発症前のSCDなどの段階でもAβの蓄積が始まっていることが分かってきている。しかし、脳ドックなどでMRIによる撮影をしても、MCIの後期にならないとAβは発見できない。その点、新井氏が自身のクリニックに導入した「アミロイドPET」なら脳内の微量のAβも見つけ、「先制医療」をすることが可能という。

 ただ、それだけで認知症を予防するのは難しいため、昨年4月に「健脳カフェ」を開設した。2次予防を徹底するための施設で、高齢者でも筋力向上が可能な体操、歌いながら左右の手で異なる動きをするといったセッションなどを手がけている。新井氏は近くこれらのプログラムもオンラインで全国の人に提供できるようにする考えを示した。

 続いて上智大学総合人間科学部心理学科の松田修教授が登壇し、「認知機能低下とともに生きるには」との演題で講演した。

 松田氏は認知機能には多くの領域があり、どの領域が低下するかは個人差が大きいと説明。ADの場合、記憶力は落ちていても論理的に考える力は保っている人もいて、そうした人は過去に蓄積した知識を活かすことができると話した。薬を飲んだか否かは忘れるが、計算能力は保っている人に対し、薬を取り出した後の穴を数えることで飲み忘れを防げるとアドバイスした例などを挙げた。

 また松田氏はこうした個々の残存能力を見いだし、その人に見合う支援によって認知機能の低下をカバーする「内的代償法」とともに、世代間の交流など心と脳が豊かになる刺激を与える「外的代償法」も紹介した。自分が役に立つと思えることを経験したり、仲間と一緒に楽しい活動をしたりすることによって自己肯定感や達成感が高まり、心の健康状態が改善していくという。こうした認知リハビリについて松田氏は「認知症の2次予防、3次予防に大きく貢献するのではないか」と述べた。

 新井、松田両氏の講演と質疑の後は「体験」の時間に移った。視聴者は画面越しに専門家の指導を受けながら、体操や音楽健康セッションに挑戦した。

2022年3月