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認知症「支援」から「共生」へ/日本医療政策機構が政策提言

 認定NPO法人「日本医療政策機構」は7月、政策提言「これからの認知症政策2022〜認知症の人や家族を中心とした国際社会をリードする認知症政策の深化に向けて〜」を公表した。認知症を巡る社会環境に関し、「理解し、見守り、支援する」段階から「認知症の人と共に生きる・共に創る」段階へと進化する必要性などを指摘している。

 同機構は04年に設立された非営利のシンクタンク。様々な政策提言や超党派の国会議員を対象とした勉強会などを手がけている。
近年、日本では2019年に「認知症施策推進大綱」が閣議決定されたほか、国際社会においても世界保健機関(WHO)が17年に世界各国に政策の策定を求めるなど、認知症政策に関する機運は国内外で高まっていた。ただ、その後世界に拡大した新型コロナウイルス感染症によって中断された感も否めないことから、同機構は日本が目指すべき方向性を示し、再び機運を盛り上げることを狙った。

 提言は①社会環境②ケア③研究④政治的リーダーシップ——の4つの視点からまとめられている。「社会環境」に関しては、認知症の人との共生社会実現に向け「困りごとを解決してあげる」という姿勢から、「パートナーとしてやりたいことを一緒に実現する」という考え方に転換することを求めている。医療や介護の専門家だけでなく、小売や公共交通機関、住宅産業などの事業者とともに地域づくりを進める必要性にも触れている。

 「ケア」に関しては、科学的な裏付けを基にした「リスク低減に関する取り組み」の拡充、当事者ニーズに基づいた「早期発見・早期対応」の推進を主張。早期発見のため、表情や動作、視線の動きの解析による認知機能評価などを進めるよう訴えている。
また「研究」については、認知症の人の暮らしを支える商品、サービスを評価する指標を整備し、質が担保された商品やサービスを購入できる「認知症フレンドリーマーケット」の創出を提言している。

 「政治的リーダーシップ」では、23年に日本で開催されるG7会合で認知症を主要政策課題と位置づけること、安定財源を確保するため負担に対する国民の理解を促すことを求めている。

日本医療政策機構による政策提言の主な内容

【社会環境】
・「理解し、見守り、支援する」から「認知症の人と共に生きる・共に創る」へ進化する必要性
・医療介護福祉セクターを超えて、小売事業者や公共交通機関などの事業者とともに、暮らしやすい地域を当事者とともに作る必要性

【ケア】
・認知症のリスク因子に関するエビデンスを基にしたリスク低減に関する取り組み拡充の必要性
・当事者ニーズに基づいた「早期発見・早期対応」推進の必要性

【研究】
・資金を継続的に確保し、中長期的に日本における認知症研究を成長させる必要性
・「認知症フレンドリーマーケット」を創出する必要性

【政治的リーダーシップ】
・2023 年に日本で開催されるG7 会合において、認知症を主要政策課題として取り上げる必要性
・認知症基本法の早期制定の必要性
・社会保障財政の安定に向け、負担を分かち合う改革への国民理解を促す必要性

2022年8月