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検定制度を創設/生涯健脳「相談士」と「指導士」

新井平伊・財団会長

 一般社団法人「生涯健康社会推進機構」(理事長・金指潔東急不動産ホールディングス会長)は、認知症の予防に軸足を置いた新たな資格検定制度をスタートさせる。資格は初級の「生涯健脳相談士」と上級の「生涯健脳指導士」の二種類で、「相談士」「指導士」とも9月27日から検定を始める。認知症研究の第一人者、新井平伊・アルツクリニック東京院長(順天堂大名誉教授)が全面監修し、毎日新聞社が後援する。

 現在、認知症関連の資格は認知症と診断された人へのケアに関するものが大半だ。オレンジリングを持つ「認知症サポーター」は6月末時点で約1400万人に達しているが、役割は認知症になった人を支えることにある。その前段階の予防や早期発見を重視した資格は一部専門職向けのものしかなく、軽いもの忘れが気になったときに相談できる人材や場所は不足している。このため同機構は「共生と予防」をうたう国の認知症施策推進大綱に沿い、認知症発症後の支援に加えて予防(発症を遅らせる二次予防、進行を遅らせる三次予防)に関する正しい知識を学んで相談に応じることができる資格を創設することにした。

 初級の生涯健脳相談士は、ドラッグストア、コンビニやスーパー、金融・保険業、住宅産業、宿泊業など、人と接する機会の多いサービス業の人に取得してもらうことを想定している。もの忘れを心配している人、認知症予防に関心を持つ人から気軽に相談を受け、不安を和らげたり適切なアドバイスをしたりできる人材を育てる。

 上級の生涯健脳指導士は医療、介護、行政の専門職のほか、「相談士」からのステップアップを望む人を対象としている。「相談士」の役割に加え、認知症の二次、三次予防の実践的指導ができる資格とする。

 資格を取るための講義は初級、上級とも、①「症状」=講師・新井氏②「診断」=同・同③「治療(薬物)」=同・同④「治療(非薬物)」=同・古田晶子こころのケアのための芸術協会代表⑤「ケア」=同・服部安子介護・生活質向上機構代表⑥「制度」=同・奥山恵理子浜松人間科学研究所代表——の6つ。講義時間は初級向けが各25分、上級向けは各30分。

 検定試験は1次試験(40問)に合格した後、3〜6カ月内に三つの事例レポートを提出してもらい合否を判定する。講義・検定ともすべてWEBで実施する。受講・検討料は「相談士」が9000円+消費税、「指導士」が15000円+消費税、認定料1万円+消費税(5年更新で更新時の検定料1万円+消費税、認定料5000円+消費税)。

 同機構は初年度に関しては100人程度の合格者を見込み、軌道に乗った段階で毎年度1000人規模に増やしていく予定だ。同機構の理事でもある新井氏は「人生100年時代、生涯健康で過ごすには脳の健康、『脳寿命』が最重要。認知症医療は『発症後の治療』から『予防と発症前の介入』に主体が移ってきており、二次予防を中心とした相談、指導に対応できる人材の育成が社会的急務と考えた」と話している。

 お問い合わせはメールで生涯健康社会推進機構()へ。

 認知症予防財団は公益財団法人として検定事業を行う資格がないため、今回の検定制度に関与していない。近く国に申請をし、認可された段階で同機構と新制度を共催することにしている。

 生涯健脳相談士(初級) サービス業の従事者など 認知症予防に関する適切なアドバイスができる
 生涯健脳指導士(上級) 医療・介護従事者や行政職員など 認知症の二次、三次予防に関する指導ができる

2022年8月