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2割負担の対象者拡大など 介護保険改革 負担増決定先延ばし

 厚生労働省は24年度の施行を目指す介護保険制度改革で、さまざまな負担増を検討している。サービス利用時の自己負担割合(原則1割)が2割となる対象者を増やすことが柱だ。また、保険料について65歳以上の高所得の人の負担を引き上げることも考えている。

 ただ、これらの負担増に関しては昨年末に素案を策定するはずだった当初方針を急きょとりやめ、決定を年明けへと先延ばしした。内閣支持率の低迷に加え、昨年10月から75歳以上の後期高齢者医療制度で負担増が始まったばかりとあって、与党内に慎重論が浮上した。2割負担となる対象者の拡大や、一定以上所得のある高齢者の保険料引き上げは「遅くとも23年夏までに」、介護老人保健施設(老健)など多床室(大部屋)の室料を全額自己負担とする案については「23年度中に」それぞれ結論を出す意向だ。

 厚労省は自己負担割合のアップについて、所得基準を緩めて現在2割以上負担している人(全体の9%)を増やす形で進めたい考えだ。単身者の場合、現在は「年間所得160万円以上」の人が2割負担となっており、この基準額を引き下げる方向で議論する。

 介護保険の自己負担は制度発足の00年度以降一律1割だったが、15年から一部に2割負担を導入し、18年からは「年間所得220万円以上」の人を3割負担とした。

 後期高齢者医療制度の自己負担(原則1割)は昨年10月から約30%の人が2〜3割負担となっている。厚労省としては介護保険も足並みをそろえ2割負担の対象者を広げたいところだ。

 また、65歳以上の介護保険料アップも検討している。65歳以上の保険料は市区町村ごとに異なり、21〜23年度の基準額は全国平均で月額6014円。金額は所得によっても違い、国の所得区分基準によって9段階に分かれている。最も高い人(年間所得320万円以上)は基準額の1・7倍で、全体の7・1%が該当する。最も低い人(生活保護受給者など)は基準額の0・3倍だ。

 厚労省はこの区分の上下を広げて細分化、高所得の人はより負担が増え、逆に低所得の人は負担が軽くなるようにする意向だ。今でも市区町村は条例を制定して国が示す所得区分を細分化できるものの、国の区分通りに保険料を設定している市区町村は多い。国が区分見直しに踏み込めば、多くの市区町村も国の方針に従って保険料の上下限を見直すことになりそうだ。区分ごとの所得基準など詳細は法案化作業の段階で詰める。

 このほか、老人保健施設や介護医療院の多床室(大部屋)入所者からも室料を徴収する。既に特別養護老人ホームは個室だけでなく多床室も有料化されている。同省は今年の通常国会にこれらの負担増を盛り込んだ法案を提出することを目指している。

 一方、要介護1、2の人向けの訪問介護、通所介護サービスを市区町村の地域支援事業に移管する案や、ケアプラン(介護計画)作成時に利用者負担を求める案については反発が強く、見送る方向となっている。

 高齢化により、22年の介護サービス利用者は約516万人に達した。制度発足時、00年(約149万人)の3・5倍だ。

 利用者の増加に伴い、保険料や自己負担割合も増え続けている。保険料でみると、00年度に月額2911円だった全国平均の基準額は、15年度に「壁」とされてきた5000円をあっさり超えた。一律1割だった自己負担割合も上がった。それでもなお財政難を解消できず、厚労省は高齢化がピークを迎える40年度には月額保険料(基準額の全国平均)が9200円程度に膨らむと推計している。

■24年度の介護保険制度改革で検討されている主な負担増■
・65歳以上の保険料について、高所得者は引き上げる
・自己負担割合(原則1割)が2割となる人の所得基準を引き下げる
・老健施設、介護医療院の大部屋入居者から室料を徴収する

2022年12月