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「レカネマブ」の脳内作用 映像化に成功

小野賢二郎教授

 金沢大学医薬保健研究域医学系脳神経内科学の小野賢二郎教授らの研究グループは、アルツハイマー型認知症(AD)の新薬として期待される「レカネマブ」の成分がADの原因物質とされるたんぱく質に作用している様子を世界で初めて撮影することに成功した。成果は5月4日(米国東部時間)に国際学術誌「Nano Letters」のオンライン版に掲載された。

 たんぱく質の一種、アミロイドβ(Aβ)は20年程度かけて凝集しながら脳内にたまっていく。凝集が進む過程でタウたんぱくも関わり、最終的に線維状となっていく。ADはAβの集合体などが脳の神経細胞を損傷し、発症するとされている。

 小野教授らのグループは高速原子間力顕微鏡を活用し、レカネマブ投与後にAβの集合体の動態を観察した。その結果、レカネマブの成分がAβの集合体を取り囲んでいく様子や、凝集を抑制していく様子を1万分の1ミリの世界で映像化することに成功した。また、レカネマブがAβの集合体に結合することで、神経細胞を死滅させる毒性を軽減させていることも分かったという。

 レカネマブは認知機能の低下を遅らせる効果を示し、日本でも早ければ年内に承認される見通しだが、薬が脳内でどのように作用しているのかはハッキリしていなかった。

 小野教授は「新たな根本治療薬の開発に向け役立つ意義ある研究になったと考えている」と話している。

2023年6月