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自治体初のオンライン健脳カフェ導入/高知県宿毛市が認知症予防で

「いきいき百歳体操」に取り組む宿毛市民

 高知県宿毛市は7月、介護保険の地域支援事業(介護予防)の一環として、認知症の予防効果が見込めるプログラムをオンラインで市民に体験してもらう取り組みを始めた。今年度は500人を目標に自宅や地域の集会所にいながら参加してもらい、健康寿命の延伸に結びつけていく。新井平伊・アルツクリニック東京院長が開設した「オンライン健脳カフェ」を自治体として全国で初めて導入した。

 2020年の国勢調査などによると、同市の人口は約1万9000人。高齢化率(65歳以上)が40%と高いうえ、一般世帯に占める高齢単身世帯の割合も全国平均を6・5ポイント上回る18・6%に達している。要介護認定者のうち日常生活に支障をきたすレベルと判定された人は70・1%で、全国平均より8・4ポイント高い。このため集会所などで市独自の「いきいき百歳体操」に取り組む自主グループへの支援などを通じ、介護予防に力を入れてきた。

 ただ、同市は286・2平方キロの広大な面積を有し、中山間地域に点在して暮らす高齢者が多い。移動手段も少ないため「いきいき百歳体操」などの集いに参加できない人もいる。そこにコロナ禍が襲い、「集いの場」の確保はさらに難しくなった。

 こうした中、昨年8月に中平富宏市長が新井氏の講演を聴いてオンライン健脳カフェ事業を知ったという。感銘を受けた市長が導入を主導し、23年度予算に必要な費用を盛り込んだ。市はこれまで認知症の人たちへの支援には取り組んできたものの、認知症予防に焦点を当てた施策はしていなかった。

 各プログラムはオンラインで配信されるため、参加する人は都合がよい時に自宅や集会所などで好きなメニューを体験できる。スマホやタブレットなどを持っていない人でも参加できるよう、宿毛市は機器の貸し出しをしている。市の長寿政策課の谷本裕子課長は「新井先生の講座もあり、市民の方に認知症のことを理解してもらったうえでエビデンス(科学的根拠)に基づく予防活動をできることが大きい。より多くの方の健康寿命延伸につなげていきたい」と話している。

 ◎ことば
 オンライン健脳カフェ アルツクリニック東京(院長・新井平伊順天堂大名誉教授、認知症予防財団会長)監修の認知症予防カフェ(東京・四谷)による、認知症予防を軸としたプログラムの配信サービス。脳と体によい運動に取り組む「健脳体操教室」、二つのことを同時に行う運動に挑戦する「シナプソロジー教室」、認知機能と関わりの深い食事を学べる「栄養教室」、うたと音楽を活用した「音健教室」などがあり、参加者はネットを通じて自分の好きな時間に参加できる。また毎週金曜には体操教室や新井氏の講話などをライブ配信している。自治体の場合は年額120万円(税抜き)で全住民が視聴できる。

オンライン健脳カフェの入会申込先は次のURLへ。
https://alz.tokyo/kennocafe-online/

2023年8月