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音楽を活用 認知症ケア/栃木のNPOと介護福祉士の作家が全国ネットワーク

ないとう氏の著書「おもいでメガネ」

 NPO法人エコロジーオンライン(栃木県佐野市、上岡裕理事長)は1月、認知症への理解を広める活動をしている作家、ないとうともあき氏らとともに、「音楽と認知症全国ネットワーク」を発足させた。音楽を活用した認知症ケアの普及や、実践に取り組む医療、介護現場の支援をしていく。

 音楽業界でアーティストの宣伝などを担当していた上岡氏は、海外での活動中にタイ・バンコクの環境破壊に接し、地球環境への関心を深めた。退職して米国で環境を学んだ後、2000年にNPOを創設し、音楽家の故坂本龍一さんらと活動してきた。

 そうしたなか、親が認知症になったことを機に高齢者のケアにも目を向け、音楽との接点を探るようになる。17年に好きな音楽を聴いた介護施設入居者の行動変容を調べている米国の団体からアジアでの調査を勧められ、栃木市の介護施設で実験的に始めた。

 その後コロナ禍で活動が難しくなった折、やはり音楽業界出身のないとう氏から協働の申し出を受けた。ないとう氏は認知症の祖母と9歳の孫「よしお」のひと夏のふれ合いを描いた「おもいでメガネ」などで知られる作家ながら介護福祉士としても活動し、認知症に対する正しい理解の普及を目指す団体の代表を務めている。

 上岡氏とないとう氏は介護現場での音楽の活用について意気投合。コロナ禍収束のメドも立ったことから団体をつくって音楽による高齢者ケアの普及を目指すことにした。

 実際、高齢者が昔好きだった音楽を聴くことで脳が刺激され、認知機能が改善する事例は広く知られている。エコロジーオンラインは昨年、栃木県の地元FM局と協働し、高齢者に音楽を聴いてもらいつつ、当時の世相を提供する企画もスタートさせている。

 今回新たに発足させたネットワークでは、①認知症の理解の促進㈪音楽と認知症をつなぐ体験の発掘と共有②音楽と認知症に関する情報の啓発③高齢者介護現場への音楽の導入の支援−−に取り組む。上岡氏は「スマートスピーカーの普及などで活動のハードルは昔ほど高くなくなっている。音楽で社会貢献をしていきたい」と話している。

2024年2月