「第11回全国高等学校ビジネスアイディア甲子園」

「役に立ちたい」思い開花

  高校生が起業アイデアを競う「第11回全国高等学校ビジネスアイディア甲子園」(大阪商業大学、毎日新聞社主催)の最終審査と表彰式が12月15日、東大阪市の大阪商業大学で行われた。過去最多となる184校から、7294件のアイデアの応募があり、最終審査に残った6件の考案者がプレゼンテーションを行った。その結果、グランプリ1件、準グランプリ2件、審査員特別賞3件が選ばれた。記念講演では、赤城乳業マーケティング室ガリガリ君プロデューサーの萩原史雄さんが販売戦略などについて話した。

 「ビジネスアイディア甲子園」は、「世に役立つ人物の養成」を建学の理念とする大阪商業大学が、「起業教育」の実践の場として、02年から始め、今回で11回目。04年度には文部科学省の「特色ある大学教育支援プロジェクト」に選ばれ、さらに06年からは毎日新聞社が主催に加わり徐々に参加校が増加、全国規模のコンテストに拡大した。
 「こんな製品がほしい!」「こんなサービス、便利じゃない?」などという発想を出発点にした、独創性あふれるビジネス企画を募集。高校生がビジネスプランの構想を通じて、目的意識をもった進学や進路の選択に役立てることを目的としている。
 今回は応募7294件について、大商大の起業教育委員会などが独創性や市場性などの観点から厳正な審査をした後、6件のアイデアを選定。最終審査では、プレゼンテーションの模様やアイデアの内容を元に、各賞が決定した。
 また、積極的に取り組み優秀なアイデアを数多く応募した学校20校に「学校賞」が贈られた。  大商大の谷岡一郎学長はあいさつで「東大阪市には数千の中小企業があり、まさに種をまく街。そこにある大学だから、とコンテストを始めた。今回は最多の7000件を超える応募があり、その反響と内容のレベルの高さに驚き、喜んでいる」と語った。

<グランプリ>
 ◇新幹線、スマホで車内販売「ザ・スマート駅'sプレス」
       −−東京都市大学付属高校1年・岡ノ谷優貴

 新幹線の利用目的は、ある統計によると旅行・観光が42%、出張が28%。そして多くが、新幹線は静かで快適な空間と回答している。人はそこで景色やインターネットを楽しんだりしている。しかし一方で、東海道新幹線では2000年に食堂車が廃止され、12年には「こだま」の車内販売もなくなった。
 私がこのサービスを考えたのは、新幹線の「こだま」での経験がきっかけだ。発車時間ギリギリに駅に着いたため、弁当などを買う時間がなかった。しかし、車内販売はなく、駅で停車している間に買うことも考えたが、荷物が心配で買えなかった。新幹線はそのときの私にとって快適な空間ではなかったのだ。
 そこで思いついたのが「ザ・スマート駅'Sプレス」というサービスだ。まず専用のアプリケーションを自身のスマートフォンにダウンロードし、それを使って弁当などを注文する。メーンのコンピューターに注文情報が送られ、車内にも伝わって、販売員はそれを見て新幹線の乗客に商品を届けるというものだ。注文情報は途中駅にも同時に伝わるので、社内の在庫管理や補充も行える。
 このシステムでは、導入する際、座席に別の機械を設置する費用がかからない。また、欲しい人が欲しいときに購入することができ、販売員のロスも少ない。注文画面に広告を載せ、広告収入を得ることもできる。
 きっとこのシステムで新幹線内はもっと快適な空間になると思う。

 

<準グランプリ>
 ◇ジッパーで開閉紙パック 「ジップパック」
       −−静岡県立浜松東高校3年・勝崎実輝

 紙パックはジュースや牛乳などによく使われているが、私は不便を感じている。学校内でも20%の人が「開けにくい」「こぼれる」「保存がきかない」と不便を感じていた。浜松市の「いなさ酪農業協同組合」に聞いても、開けにくいとの声が高齢者から寄せられているそうだ。しかし昭和40年から形は変わっていないという。
 「ジップパック」は開け口の半分をジッパーにした紙パックだ。食料保存袋などの仕組みを取り入れた。開けやすく、密閉できるので倒れてもこぼれない。スライド部分も紙なのでリサイクルもできる。きっと小さな子どもにもお年寄りにも使いやすい商品となると思う。

 

<準グランプリ>
 
◇新聞受けで安否確認 「みまもりポスト」
       −−岡山県立岡山南高校1年・沢木亜実

 高齢者の孤独死を少しでも減らしたいと思いついた。新聞を入れるとポストに光がつき、取り出すと光が消える。同時に、取り出したという情報が遠隔地の家族にも届く。
 国の補助金を受けて、ポストを作り、新聞の購読者を増やせばお年寄りに安く新聞を提供できるかもしれない。岡山県で高齢化率が3番目に高い、吉備中央町の役場でアイデアについて話を聞いた。行政では自宅訪問は年に3回。補助金を出す財源はないそうだ。補助金や企業との連携が今後の課題として浮かび上がった。
 企画を通じて、私は大きな勉強ができた。ポストはすぐには実現しないかもしれないが、将来役立てばと思う。

 

<学校賞の受賞者から>
 ◇イノベーター目指せ
       −−大阪市立大阪ビジネスフロンティア高校・平寿之教諭

 本校は大阪市内の商業高校3校が一緒になり昨年4月に開校しましたが、それ以前からこのコンテストに応募しています。生徒たちは6月末から取り組みます。夏休み中に不満や不便をキーワードにアイデアを考え、8月末から、より現実的な企画に仕上げるのです。
 本校では大学まで7年間を見越した授業を心がけ、大学の先生や企業家らを招き教えを請うこともします。イノベーターになれという方針もあり「ビジネスアイディア甲子園」には、これからも参加しようと思っています。(談)

 

<講 評>
 ◇参加者、一段と成長
       −−審査委員長 大阪商業大総合経営学部教授・粂野博行

 過去最多の7294件の応募作品は大きく、社会環境関連▽生活・住環境関連▽身近な商品関連――の三つに分類できた。それらを新規性▽独創性▽市場性を観点に、最終的に6件に絞りこんだ。
 グランプリの「ザ・スマート駅’sプレス」は新幹線の車内販売などをスマートフォンで注文できるアイデアで「生活環境・住環境」に該当。乗客側にも販売側にもメリットがあり、幅広いニーズが考えられる。
 準グランプリの「ジップパック」は「身近な商品」に該当。まさにあったらいいと思わせるアイデアだ。
 同じく準グランプリ「みまもりポスト」は社会環境関連で、1人暮らしのお年寄りの安否確認という社会問題を解決しようとする姿勢が素晴らしい。
 審査員特別賞の3件も含め、プレゼンテーションもレベルが高かった。行政や企業への調査や、実物の製作など準備を通じて参加者の成長がうかがえた。

 

<記念講演>
 ◇危機感が生んだ大ヒット
       −−赤城乳業マーケティング室 ガリガリ君プロデューサー・萩原史雄さん

 ガリガリ君は1981年、危機感から生まれた。石油ショック以降、主力の氷カップの値段を上げざるを得ず売り上げが落ち込んだ。そこで「子どもが片手で食べられるかき氷」を開発した。「ガリガリ」は氷をかじる音、パッケージの水色は空や海のイメージだ。
 重点的な販路を一般小売店から増えつつあったコンビニに移し、コンビニの売り上げ情報を生産、販売の計画に反映させた。ガリガリ君のコンビニでの売り上げは10年間で10倍になった。
 コンビニ商戦が激化すると、主婦をターゲットにした箱売りや、キャラクターイメージの刷新、テレビ広告などを展開した。
 子供たちの会話にガリガリ君を登場させることも考えた。ゲームソフトや玩具メーカーとのコラボレーションに乗り出し、山手線に「ガリガリ君夏休み号」を走らせた。ガリガリ君の妹「ガリ子ちゃん」も誕生させた。チョコレート味やコーンポタージュ味などの新商品も開発した。
 誕生から31年。私たちがその間、守ってきたことは三つ。商品を生活の中で考える、低予算の企画を考える、他を巻き込んで共に創る。そして他がやらないことにチャレンジしてきた。

 

<その他の受賞者>
 【審査員特別賞】
▽「女性限定宅配サービス」=長野県塩尻志学館高校3年・中沢可南子さん
▽「お知らせライトマン」=愛知県立杏和高校2年・清水結衣さん
▽「簡易型ゴミ袋圧縮装置『吸ってQ』」
  =愛知県立豊橋工業高校3年・前田喜洋さん、冨田宗馬さん、藤井貴也さん
 【学校賞】
▽埼玉県立越谷総合技術高校
▽千葉県立東金商業高校
▽東京・広尾学園中学・高校
▽東京・富士見中学高校
▽東京・東京都市大学付属中学・高校
▽横浜市立横浜商業高校
▽静岡県立浜松東高校
▽愛知県立愛知商業高校
▽愛知県立一宮商業高校
▽愛知県立緑丘商業高校
▽京都府立京都すばる高校
▽大阪市立大阪ビジネスフロンティア高校
▽大阪市立淀商業高校
▽大阪・好文学園女子高校
▽大阪・大阪商業大学高校
▽神戸市立六甲アイランド高校
▽和歌山県立和歌山商業高校
▽岡山県立岡山東商業高校
▽岡山県立岡山南高校
▽岡山県立倉敷商業高校

 

主催 大阪商業大学、毎日新聞社
後援 経済産業省、大阪府教育委員会、東大阪市、東大阪市教育委員会、
大阪市教育委員会、全国商業高等学校協会

 
 
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