
ソマリア難民 着たきりの10歳
内戦で家族を失い、キャンプ内で一人生活するムハンマド・アリ・ユーゼフ君=エチオピア・ドロアドのメルカディダ難民キャンプで、小松雄介撮影
携帯電話の修理販売業を営む両親のもとに生まれた長男。3歳から始めたサッカーが大好きで、小学校の授業が終われば、友達とボールを追いかけた。あの日も、いつも通り外でサッカーをしていた。自宅のある方向から爆発音がとどろいた。「まさか」。急いで戻り、目にしたのは、白い煙に包まれた我が家、そして、両親と4歳年下の妹の遺体だった。暫定政府に抵抗する急進的イスラム勢力が放った砲弾が自宅を襲ったのだった。
涙が止まらなかった。「しっかり学校に行って、いい仕事に就くのよ」。どれだけ遅くまでサッカーをしても決して怒らず、優しく勉強の大切さを説いてくれた母親を失ったことが一番悲しかった。
国境までは父親の友人の男性がトラックで運んでくれた。だが、その男性もソマリアに戻った。一人で過ごす約15平方メートルの簡易テントの中には、ベッド代わりのわら座敷が1枚。水くみ用の黄色いタンクが2個、無造作に転がる。1着だけ持つ青と黒のしま模様のTシャツは灰色に汚れている。
記者が出会った日、ムハンマド君は、キャンプ内にいる国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の職員に訴えていた。「靴磨きの仕事をするためのブラシが欲しいんです」。洗濯のためのせっけんもない。働こうと考えたが、道具も手に入らないという。「これからどうやって生きていけばいいのか分からない」
UNHCRによると、ドロアド近郊の二つのキャンプ内で暮らす子どもは約2万1000人。そのうち一人で暮らす孤児の数は約350人にのぼるという。大半は内戦で両親を亡くした子どもたちだ。【ドロアド(エチオピア南東部)で遠藤孝康】