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2015年ネパール ネパール大地震報告【特集】

笑顔待つ

倒壊した家屋に住み続けているというサッテ・バンナラさん。長女トリスナちゃんを抱きながら「毎日が不安。子どものためにも早く普通の生活が送りたい」と語った=バクタプルで

倒壊した家屋に住み続けているというサッテ・バンナラさん。長女トリスナちゃんを抱きながら「毎日が不安。子どものためにも早く普通の生活が送りたい」と語った
=バクタプルで

 今年4月25日、マグニチュード(M)7・8の大地震に見舞われたネパール。れんがや石積みの家屋が倒壊し、約9000人が犠牲になった。インフラが整っていない山村では支援の手が届かず、貧困の中で生きていた人たちは厳しい状況に追い込まれた。震災から7カ月余りたった今も、復興への道筋は見えない。

 首都カトマンズに近い観光都市バクタプル。古い街並みに崩れ落ちた家屋が点在する。強い日差しの中で、子どもを抱えた母親が途方に暮れていた。

 サッテ・バンナラさん(20)は、1歳の長女トリスナちゃんをあやしながら、ボランティアから炊き出しのご飯とカレーを受け取った。  バンナラさんと家族7人は畑に出ていて無事だったが、自宅は倒壊。他に行く場所はなく、自宅跡で生活を続けている。周囲で変わったのはがれきの山が減ったくらい。日々大きくなる娘の成長はうれしいが、先の見えない将来に不安が募る。

 震源地に近いカトマンズの北郊、シンドゥパルチョーク地区では、全国で最も多い3557人が犠牲になった。山あいのわずかな土地にトウモロコシやアワなどを育てて生計を立ててきたボテシパ村でも、多くの住民が命を落とした。

 17歳で亡くなったサンギータ・マガルさんは、教師になることを夢見て自宅で勉強中に揺れに襲われた。一度は屋外に逃げたが、母親に「机の下に入るように教わった」と言い残して家の中に戻り、がれきの下敷きになったという。

 残された家族はトタン板や廃材で小屋を建てて暮らす。室内にはサンギータさんが民族衣装の晴れ着姿でほほ笑む写真を飾ってある。母親は写真を見せ、美人で多くの人から慕われた娘を自慢しようとするが、「あの時、家の中から『お母さん』と声が聞こえた気がするのよ……」。いつもそれ以上、言葉が続かない。<写真・幾島健太郎 文・武内彩>

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