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「常識」疑い 読者の疑問に応えたい 宮崎支局(現・西部報道部) 川上珠実(かわかみ・たまみ) 08年入社

 軽度の知的障害がある女性が強制わいせつの被害に遭ったことを訴えたものの、障害を理由に検察官の起訴が無効と判断されました。入社2年目の09年9月、宮崎地裁延岡支部でそんな判決が言い渡されました。


 「被害者は、供述調書と告訴状の違いを説明できない」というのが理由でした。そんなことを即座に説明できる人がどれだけいるのか。被害者の家族らを訪ねましたが、周囲の誰もが彼女の訴えを疑っていませんでした。「裁判所には従わなくてはならないが...」と言葉を詰まらせた父親の暗い表情に胸が締め付けられ、障害者の訴えを理解する司法の仕組みが不十分ではないかと問う連載を書きました。11年4月の差し戻し審判決は女性の訴えを認め、被告に有罪判決を言い渡しました。


 司法についても障害についても、特別な知識がない私に記事が書けるのか最初は不安でした。でも、当事者一人一人に話をきいて相手の思いを理解し、分からないことは専門家を探して教えてもらって......それを繰り返して読者の疑問に応えるのが記者の仕事なのだと改めて感じさせられました。もちろんデスクや先輩の助言も受けながら、分からなかった事件の全容がだんだんと見えてきたときの達成感は大きかった。


 裁判取材だけでなく、昨年は宮崎県内で発生した口蹄疫(こうていえき)、鳥インフルエンザ、新燃岳の噴火取材にも追われました。支局記者は管内で発生した大事件の取材には基本的にすべて携わり、仕事の範囲はとても広い。次々といろんな事件や問題を取材すると、どんなに相手に寄り添おうとしても記者は結局、当事者ではなく外部の人間なのだと感じさせられます。でも、だからこそ気付くことがあるし、伝えられることがあると思います。デスクに言われた「専門家の常識が市民の非常識ということもある」という言葉を忘れずに、読者の疑問に応えるような取材をしたい。読者に「きょうの記事よかったよ」と一声かけてもらえただけで、疲れも嫌なことも吹っ飛んでしまうのは入社時から変わりません。

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