認知症110番

落ち着きがない

≪ケース1≫
 同居している要介護2の母親(77)を介護しているが、毎日しまい忘れた物を探したり、家の中をうろうろ歩き回ったりしていて落ちつかない。兄は病弱、妹は手伝わない、毎日の介護でストレスが溜まり夜も眠れない。ショートステイも騒ぐので無理と断られた。=京都・女性

≪ケース2≫
 5世帯が同居している長男の嫁です。姑(68)と大姑(89)はまるでだだっ子のように自己主張が激しく毎日振りまわされています。言い合ったり、部屋を行ったり来たりして目が離せない。多忙とストレスで暗くなってしまいます。=新潟・女性

≪ケース3≫
 姑(90)は現在入院している。先日、退院に向け帰宅し泊まったが、昼夜の区別なくトイレに起きたり、台所へ行ったり、ぶつぶつ言ったりして落ち着かない。このままではとても家での介護は無理。=埼玉・女性

【回答】体調悪かったり…トイレに行きたかったり…

 ●変化に気を配って

 落ち着かないのは病気から生じているのでしょうが、毎日繰り返し繰り返しその状熊に接していると、介護している方がストレスを感じるのはもっともなことだと思います。それでもよく観察をすると、体調が悪かったり、トイレに行きたかったり、自分で思っていることが表現できずにいると落ち着かないようです。また、何かをしたいのに何もすることがなく退屈な場合も、動き回る動作が見られます。

 まずは身体の調子はどうかを観察してみてください。食事摂取量、便秘はしていないか、歯の痛みはないか、熱はないか、血圧は安定しているか、排尿量はどうか、その他に顔色や表情などにも気を配りましょう。どこかが悪いため気分が悪くて何とかしてもらいたいのに、自分からは適切に訴えることができません。言えないことをうろうろしたりして落ち着かない行動で表している場合もあります。少しの変化にも気を配りましょう。

●退屈なのかも

 体調に変化がないようであれば、何もすることがないので退屈なのかもしれません。家の中でどんな小さなことでもよいから、役割が感じられることをしてもらうのも一つの方法だと思います。たとえば、小鳥や金魚の餌やり、花の水やり、洗濯物干し、食事の後片付け、玄関前の掃除などをしていただき、感謝の言葉をかけて存在感を味わってもらうなどの工夫をしてみてはいかがでしょうか。

 それでも落ち着かないときは、散歩に連れ出して身体を動かしてもらいます。昔の楽しい思い出などの話をしながらゆっくりと歩き、情緒的にも満足できるようにすると案外落ち着く場合が多いようです。

●話しかけを

 ケース1、2、3とも、落ち着かないで困っておられるようですが、介護している方がまいってしまいそうですね。うろうろしている姿を見るだけでイライラしてしまうでしょうが、本人もどうしていいか分からないのだと思います。一緒に暮らすことだけでも大変でしょうが、話しかけはどうしておられますか。ついつい問題行動に目がいって、注意する声かけが多く、楽しい声かけが少なくなっていませんか。笑いが出るような話しかけを心がけてみましょう。

 外に出て他の人との交流もよい刺激になりますので、デイサービスやデイケアを利用して、身体や心を動かして満足感を味わうのもよいでしょう。また、時間の許す限り、言葉は悪いですが家族全員でかまったりして、本人の存在感が感じられるようにすることもよい方法です。また、近所に買い物に行ったり、公園に行ったり、屋外に連れ出すことがよい刺激にもなります。

 介護している方は、自分だけが介護しようと思わないで、サービスを適切に利用したりして、気持ちにゆとりを持つことが一番大切です。騒ぐからとショートステイを断られたようですが、あきらめないで自分にあったサービスをケアマネジャーに相談しましょう。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大学教授=介護福祉学