認知症110番

失禁

≪ケース1≫
 今朝起きたら、介護度4の義母(97)が全裸でオムツを外していました。所構わず放尿し、介護も限界です。老人保健施設などを10軒ほど回りましたが、痴呆がひどく受け入れを拒否されました。どうしたら良いでしょうか。=宮城・女性

≪ケース2≫
 同居の義母(81)の物忘れが進み、失禁も始まりました。私の誘導で、ある程度はうまく行っていますが、一人ではポータブルトイレも使えず、部屋中を汚します。オムツもいろいろ使い分けていますが、オムツ代も大変だし、介護保険になって負担も重すぎます。家には、入退院を繰り返す90歳の舅もいます。=愛知/女性

≪ケース3≫
 私の夫(85)は脳梗塞で足に障害を持っています。介護度は4で、徘徊やオムツの取替などで苦労しています。日中は、デイサーービスやホームヘルパーを利用していますが、夜間は私しかいません。なかなか、オムツを交換させてくれないので私は休めません。=大阪・女性

【回答】プライドにもかかわる問題

 失禁のケアは毎日介護する人にとって大きな問題です。子どもの排泄物と違い量も多くにおいも強く、こまめに対応しないと家中に尿臭が漂ってしまいます。尿失禁はいろいろな病気からも起こりますが、痴呆による失禁は膀胱、尿道、直腸機能による障害があって漏れるのではなく、痴呆のため、膀胱に尿が溜まったという情報が脳に伝わりますが、伝わった先の大脳がその情報を正確に判断できなくなっているので、その先の指令や行動がチグハグになってしまうのです。

 「トイレがどこか分からない」「尿が溜まるとはどういうことなのか分からない」「尿が溜まったらどうしたらよいかわからない」「尿意があるが下着をどう下ろしたらよいか分からない」「便器であることの確認ができない」などの状況で排泄に関する判断や動作がスムーズに位かないために起こるのが失禁です。

●動作でサイン

 尿意がある場合は、うろうろしたり、ぶつぶつつぶやいたり、ドアのノブを開けようとしたり、部屋や廊下の隅にいったり、下着を下ろそうとしたりして動作でサインを発していることがありますので、観察をしていてその人特有のサインを見のがさず、タイミングよくトイレ誘導します。また、尿意がなくても行っていの時間間隔でトイレ誘導したり、トイレの位置がわからない場合は、目印にその人が分かる文字で「便所」「お手洗い」と書いたものを貼ったり、夜間などは明るくしておくとわかることもあります。

 ケース1では、所かまわずの放尿で介護の限界感があるのにもかかわらず、施設の受け入れを拒否されたということですが、痴呆のデイケアやショートステイや医療の施設の利用はどうでしょうか。また放尿の場所も観察し何か一定した場所が見えるようであれば、数カ所にあらかじめポリマーの入ったバケツを老いて様子を見るのもひとつの方法ではないでしょうか。

 ケース2では、一人ではポータブルトイレが使えないということですが、痴呆性老人は新たなことはできない特徴があるので、ポータブルトイレの利用も何回も何回も、一動作ずつ声をかけながら動作の繰り返しをしないと使用は難しいのではないでしょうか。

 ケース3は、オムツの取替えに苦労しているということですが、オムツの種類はたくさんありますのでいろいろ試しに使い、本人に合うものがあるといいですね。特に夜間のオムツは吸収量の多い製品とパッドの併用など、使用の工夫はいかがでしょうか。サイズや形など豊富ですからカタログなど参考にするのもよいと思います。

●優しい声かけを

 失禁のケアは、単に処理すればよいものではなく、その人のプライドにかかわりますので、介護者は大変ですが、優しい声かけでかかわることが大切です。しかし、介護者一人では介護負担が余りにも大きく支えきれません。周りにある資源や介護者教室などを適切に活用することで気分転換を図ってみましょう。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大学教授=介護福祉学