認知症110番

収集

≪ケース1≫
 同居の義母(73歳)は足腰が丈夫で毎日散歩に出かけては、ガラクタを集めてきて部屋の中はいっぱいです。「大切な物だ」といって捨てさせてくれません。部屋の中は不衛生で悪臭もあります。なんとかならないでしょうか。=埼玉・女性

≪ケース2≫
 3年前から母(86歳)を引き取ってみていますが、残した食事をラップに包んで自分の部屋に持ち帰り、しまいこんで忘れてしまいます。先日はトイレで拭いたペーパーが袋に入っていました。どうしたらよいでしょうか。=千葉・女性

≪ケース3≫
 81歳の姑は、毎月ショートステイを利用しています。自分の物と他人のものの区別がつかないようで、「他人の部屋のものを持ってきてしまい困る」といわれてしまいました。これからも利用したいのにこのままでは利用できなくなるのではと心配です。=東京・ 女性

【回答】無理にやめさせようとすると逆効果

 本人から見れば大切なものなのでしょうが、他人が見たらなんでそんなものを集めるのかと思いますよね。集めることで困ることがおきていたり、他者とのトラブルになったり、本人に悪影響がある場合は行動をとめなければないけませんが、そのことで問題がなければ集めたものを取り上げなくてもよいと思います。無理にやめさせようとすると逆効果になります。

 集めた中のものをどうしても返してもらいたいときは、代替を用意しておいて変えるとよいでしょう。集めることを何とかしようとする前に、いまのかかわり方が適切かどうか、なんとなく蔑視した態度や、孤立させていないかを振り返ってみてください。かかわり方を見なおすと、周囲との人間関係が問題行動の引き金になっている場合もあります。物忘れで他人の物との区別がつかないのに、盗ったのではないかという目で見ていないかなどかかわり方を再度確認しましょう。

●片付けると不穏に

 ケース(1)は、外に出かけてガラクタを集めて困っているようですが、集めることを非難して、片付けてしまうと不穏になったり妄想的な言動がでてきますので、周囲の人がそれほど困らなければ、そのままにしておいてもよいと思います。しかし、不衛生で悪臭があるという問題があれば、不衛生なものや悪臭を放つものを、本人がいない間に片付けたことが分からないようにしてはいかがでしょうか。その場合も「きたない」「なんで拾ってくるの」「笑われる」などの言葉は本人を傷つけるだけですので禁句です。それよりも、「重たいものを持ってけがしないように気をつけてくださいね」と持ってくることを正面から認める言葉で話しましょう。

●定期的に整理を

 ケース(2)は、食事の後で食べものを「捨てるのはもったいない」「あとで食べよう」とそのときは理由がはっきりしていても、時間がたつと忘れてしまう。いつも忘れてしまうのだからと説得するのではなく、腐ったものを食べないように定期的に整理して、さりげなく処分したりしましょう。排泄物を拭いたペーパーは恥ずかしいから見られないようにしているのではないでしょうか。これもそっと処分して、そのことについては言葉では特に言わないで、しまいこむ場所を確認したり、なんらかの行動パターンをつかむと予防ができます。認知力などが低下している場合もありますので、観察してみましょう。

●本人の気持ち尊重して

 ケース(3)は、ショートステイ利用中に他者の持ち物を持ってきてしまうということですが、持ち主とトラブルになったのでしょうか。持ち主から強い口調で指摘されても、本人はなぜ自分が言われているのかが分からなくて、不安になってしまうと思います。衣類などでしたら名前を書くなどで自分の物であることが分かるようにしておき、施設の物であれば後日返却しましょう。施設にいるときは簡単な洗濯物をたたんでもらうなどの役割をお願いするのもよいと思います。本人の気持ちを尊重した受容的な態度で接することが大切です。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大学教授=介護福祉学