認知症110番

作話

 長男の妻として81歳の姑と同居しています。夫と2人の子どもの計5人で暮らしています。姑は足腰が丈夫で近所へのお茶飲みやデイサービスへ行っています。一見すると普通のお年寄りに見えますし、あいさつもきちんとします。少しだけの時間ならぼけがあるようには見えません。でも、近所であることないことを話してトラブルになり、その度に家族が謝りに行っています。ぼけの症状であることは、わかっているのですがついつい大声を出してしまう日々です。もちろん家族のこともいろいろと話をしています。デイサービスに行っているとほっとします。が、先日、ケアマネジャーからデイサービスで他の利用者のことを思いつくまま言ってトラブルになることが多く、「他人に迷惑になるので、デイサービスの利用回数を減らしてくれないか」と相談されました。でも、私には勤めもあり、これ以上家でみるのは困難です。=茨城県・女性(53歳)

【回答】悪意ない思い付きの言葉 周囲に理解促して

 本人はその時頭に浮かんだことを言葉にしていて、特に悪意を感じて言っているのではないのですよね。本当のことを言っているのではなく、多くは作った話なのです。しかし、言っていることがすべて違えばだれもがそう思わないのですが、一部は本当のことのように思える部分が入っているから傷つくのですよね。

 それも常にだれがみても明らかに「ぼけているな」と見えれば、周りの人も受け入れてくれるのですが、ぼけの症状はいつも現れるのではなく、正常な部分とぼけの部分が混じりあっているんですよね。時にはしっかりしていて、ぼけの症状がある時はなぜ、と理解できなくなります。このように差があることが特徴のひとつです。

訪問先に病気と告げて

 元気で自分で行きたい所に行けることは、とてもよいことなのですが、そこで他者の傷つく場面を作ってしまうのですね。家の中に閉じ込めておくことは無理なのですから、訪問先の人たちに痴呆症状があること、病気がぼけの症状になるのであって、決して他者を悪く思っているのではないことを、家族としては辛いでしょうが話して姑さんとかかわる人に理解していただくのはどうでしょうか。記憶や知的能力は低下して迷惑をかける言動があっても、感情の部分はしっかりしているので、拒否する態度ではなく受け入れてもらいたいことも併せて理解してほしい、と伝えておくのが良いと思います。そこまでは言いにくいのであれば、痴呆があることを伝えるだけでも対応が違ってくると思います。

 ケアマネジャーからデイサービスを減らすように言われたようですが、それは家族としても困りますよね。痴呆専門のデイサービスがありますが、現在利用しているデイサービスは違うのでしょうか。ケアマネジャーはサービスを調整するのが仕事ですから、家族も姑さんの状態を観察して困った状態などをメモしてケアマネジャーと相談し、現在利用しているデイサービスが適切でないのであれば他のデイサービスを探し、姑さんが安定できる場を確保してもらいましょう。

 家族が介護負担で共倒れにならないように、家族の要望などをケアマネジャーに遠慮なく伝えて、活用できる資源や情報などを入手して精神的な負担が軽くなるようにしましょう。家族だけでなんとかしようと思わないことが大切です。

 家族も姑さんの言動に大声を出してしまうようですが、人間ですから分かっていても時にはそうしてしまいます。介護負担が重なってくると大声を出すことが頻回になってしまいますから、介護者の気分転換は欠かせません。現状はどうでしょうか、できていますか。デイサービスだけではなく、訪問介護やショートステイなども上手に活用するのもよいと思います。

本人も傷ついているはず

 本人も決して安閑としているのではなく、周りの人の言動に傷ついていると思います。感情はいつまでも残っていますので配慮が必要です。自分で動けていても目的にそった行動ではないことが多いですから、日常生活がきちんとできているかを把握して、リズムのある生活が継続できるように常に見守りや声かけを忘れないようにしましょう。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大学教授=介護福祉学