認知症110番

頑張らない介護

 90歳の父と88歳の母と同居している長女(67歳、一人っ子)です。定年で仕事を辞めて3年目に入りました。仕事をしている時は、訪問介護サービスを利用していましたが、現在は2人ともデイサービスを週2回それぞれ違う曜日に利用しています。2人とも認知症で、かなり物忘れがあり、毎日、朝起きてから夜、寝るまで、指示しないと生活ができません。毎日チグハグな言動にいささか疲れが出て、時には強い口調で傷つける言葉を投げかける自分が嫌になります。虐待のニュースなどをテレビなどで見ると自分ももしかしてなどと思うことがあります。3食きちんと食べているせいか体は私より元気です。(埼玉県、女性、67歳)

【回答】在宅サービス活用し、自分の時間を

 大切な両親であっても、毎日休みなく介護は続いているのですから身体ばかりでなく、精神的にもお疲れのことと思います。他者から見れば、自分の両親で言葉で言えば行動できるのですから、それほど手がかかるように見えませんよね。しかし、介護している当事者はいろいろ気を使い、絶えず様子を見ながら生活をしていくことは並大抵のことではありません。理屈ではわかっていても、目の前でチグハグな言動が繰り返えされると、感情的になってしまうのは、当然です。

 たとえば、「今日は何曜日」「○曜日よ」。数分も経たないうちに、また同じことを聞く。それも4〜5回であれば、物忘れがあるから傷つけないように受け入れて、少しは強い口調になるけれど「○曜日よ」と答えられますが、同じことが10回も20回も続くと、ついイライラしてきますよね。理屈では、本人の言うことをやさしく受け入れてあげようと思っても、それが毎日繰り返されるとなると、穏やかに答えられなくなりますよね。そこに、認知症の人の介護の難しさがあるのです。長期間、休みなく介護していると、自分の感情をコントロールするのが難しくなってしまうのは自然だと思います。

 自分の気持ちを平静に保つには、気分転換と心のゆとり、休養が必要です。ご両親は、あなたが配慮しながらお世話をされているので、健康が保たれているのだと思います。支えているあなたはストレスで一杯なうえに、先を考え不安も抱えておられると思います。世間では「頑張らない介護」という言葉が目に付きますが、介護している当事者は、その意味を十分理解していても、精神的にはいろいろなことに配慮し、頑張らざるを得ない状況だと思います。

 いろいろな考え方があると思いますが、まずは在宅サービスを上手に活用してみてはいかがでしょうか。現在はデイサービスの曜日を変えて利用されているようですが、2人一緒の定期的なショートステイサービスを利用して、その時間だけは自分の時間を作って気分転換をされてはどうでしょうか。心配なこともあろうかと思いますが、ご両親から少し距離をあけることも必要です。自分の気持ちをリフレッシュすることが何よりも大切だと思います。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大学教授=介護福祉学