認知症110番

認知症初期の留意点

 結婚と同時に85歳のと暮らしてきました。家族は姑と長男62歳と妻62歳で、2人とも働いています。姑は今も朝食の準備をしています。最近味付けがときどき変かなと思うときもありますが、「まあいいか」と夫と顔を見合わせながら食べています。

 先日、義妹が「お母さん、ぼけてきたんじゃない、この間電子レンジにご飯を入れたり、出したりしていたわよ。お茶を入れようとしてポットからお湯が注げなくてボーとしていたわよ」というのです。毎日一緒にいると、そんなものかと思って気にもしていませんでしたが、認知症のはじまりは、どんなところに気をつければわかるのでしょうか。(福岡県、長男の妻、62歳)

【回答】日々の表情や動きから「サイン」を

 長年一緒に暮していると、同じ時間を共有しながら積み重ねたことが空気みたいになり、気にならない存在になってしまうのですね。それは嫁姑の関係がよい状態だったからだと思います。加齢とともに、体も心も衰えてくることは自然なことで、その変化はゆっくりしたもので一緒に生活していると気づきにくいものです。離れて暮していて、ときどき顔を合わせるとその変化に気づくものです。義妹さんが気づいたのも自然のことだと思います。

 日々の生活の中で「おかしいな」と感じるサインがあると思います。朝食の準備をしているということですから、冷蔵庫の管理などはいかがでしょうか。たとえば冷蔵庫内の冷蔵、冷凍が適切にできているか、食器を元の位置に片付けることができているか、電子レンジの操作や温めたものの出し忘れがないか、炊飯器の水の量やスィッチの入れ忘れ、出来上がりの時間、調理器具の使い方、ポットの操作やお湯の量の管理、献立の繰り返し、味付けの変化、台所の片付けなどいつも行なっていたことがスムーズな流れでできているかなどを意識していると気づくことができると思います。表情や動きなども観察してみて下さい。その他に着ている洋服やテレビ番組を選んでみているかなども気にして下さい。

 認知症の初期症状に気づくことは、お姑さん自身も物忘れに戸惑いを感じているかもしれませんが、それらを家族が理解して適切に対応できます。これから起こってくるであろう生活の混乱を予防することができ、専門医に受診することで適切な医療を受けることができます。お姑さんの状態を理解することで、お姑さんや家族が今まで築いてきた生活を継続していけるよう社会資源などにも目を向けてください。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大学教授=介護福祉学