認知症110番

周囲の理解

 67歳の妻と暮しています。半年前から徐々に生活全般ができなくなり、特に炊事は火の消し忘れがあり、一緒にやっています。買い物も同じものを買ってしまうので一緒について行きます。長年連れ添い苦労をかけたので、これからはそのお返しをと思うのですが、毎日一緒にいると、時には大声を出してしまいます。近所の人もなんとなく変だなと思っているようですが、体は元気なので、なにも言っていません。でも、一人で出て行くこともあるので危険防止のためにも伝えた方がいいかなと思っていますが、親しくしているわけでもないので悩んでいます。(東京都、夫68歳、男性)

【回答】理解者増え、今までよりも気持ち楽に

 毎日のことですから、元気で仲の良い夫婦だって、時には大声を出し合うことはごく普通のことです。しかし、今の奥様の状態は、生活全般ができなくなって半年ということですから、奥様自身も戸惑いや混乱を感じて、何をどうしてよいかわからないのに、大声でいわれると、よけいに混乱状態になってしまうのではないかと思われます。周りの状況によってはさらに混乱が増幅されてしまいます。

 最近では、認知症に対しての情報がたくさんありますが、もう一度一般論を整理してみましょう。記憶に関しては、ご飯を食べたこと全部を忘れてしまうような記憶の全体的欠落▽認知・理解・判断力に関しては、何時であるかは時計を見て読むことができるが、その時間に自分が何をすればよいのかがわからない▽買い物に行っても、何をどのくらい買ってよいかわからない▽同じことを何度も繰り返し聞く▽自己抑制力に関しては、自分の感情をコントロールすることができない▽計算力等の知的機能に関しては、買い物をしてもいくら払えばよいかわからず、大きなお金を出しておつりをもらう、そのおつりがあっているのかがわからないーなどが起こってきます。

 これらが日々の生活をしていく上で、今までであればスムーズにできていたことを妨げてしまうのです。外見は変わらないのに、つじつまの合わない言動に周りは、度忘れくらいに思っていると、繰り返し同じような状況になり、ご主人としてはつい大きな声をだしてしまう気持ちはよくわかります。また、毎日繰り返し同じようなことの連続にご主人の方がストレスになってしまうと思います。

 近所の人や知人は、外見は変化がない状況なのに、「おかしいなあ」と感じても黙っているでしょうが、奥様を見る目がなんとなく違っていて、その雰囲気を奥様は感じ取り、プライドが傷つくと思われます。周囲の不適切な対応や反応が、不安や苛立ち、戸惑いを増幅させてしまいます。それよりも、近所の人や知人に理解していただき、フォローしていただいて、安心した気分になるほうがお二人にとってよいと思います。状況を話すことは辛いことでしょうが、勇気をもって伝えましょう。きっと理解者が増えて、今までよりも気持ちが楽になると思います。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大学教授=介護福祉学