認知症110番

義母の独り言

 82歳の義母と夫婦(夫60歳、妻58歳)の3人暮らしです。義母は5年前から物忘れがひどく、日々の生活全般に介助が必要になり、長男の妻である私が介護をしています。専業主婦のため時間があり、義母の行動を見守りながら家事をしています。特に困るようなこともないのですが、気分転換をかねて買い物には一緒に行くようにしています。買い物中もそうですが、夜間もぶつぶつ言うことが多く、その声が気になって注意すると落ち着かなくなってしまいます。隣室に寝ている私たちは、眠れなく睡眠不足で困っています。(長野県、嫁、58歳)

【回答】まず受診を、抱え込まないで

 夜静かになると、ぶつぶつ言っている声だけが大きく聞こえ、気になりますよね。寝ようと思ってもより気になって眠れず、慢性的に睡眠不足になり、疲労がたまってしまいますよね。「静かにして」といっても、その場限りになってしまうか、逆に言ったことがきっかけになって不穏になってしまうこともあるでしょう。ときどきであれば、止むを得ないと思う気持ちにもなるでしょうが、頻繁になってくると、「また今夜も」と思うだけでよけいにストレスとなり、なんでもないときでも耳にこびりついて、言ってもいないのに聞こえるような気になってしまうこともあると思います。

 ぶつぶついう状態は「せん妄」といって、軽い意識混濁に記憶障害、見当識障害、言語障害、知覚異常などが加わって起こります。特に夜間に起こる(夜間せん妄)ことが多く、数時間から数日間続くこともあります。認知症ではよくみられる症状ですが、いくら理論的にわかっていても、一緒に生活している人にとってはたまらない状況だと思います。夜間眠れるように、日中体を動かしたり、気分転換を図るように工夫をしておられても、独り言が続くのですから、少し認知症が進んだとも思われます。認知症専門の医師に診てもらっているのでしょうか。診てもらっていないようでしたら、今後のこともありますので、適切なアドバイスを受けたり、状態によっては薬も必要だと思いますので、是非診察を受けることをお勧めいたします。自分たちだけで抱え込まないで、いろいろな資源や情報を上手に活用しましょう。

 夜間、お母さまがぶつぶつ言っているときは、そばに行って手を握ったり、温かい飲み物や軽い食べものを口に入れてあげるのもひとつの方法です。夜間だから眠るというより、落ち着かない現状を和らげるためにどうすればよいかを優先して考えましょう。ご夫婦が眠れないのと同様に、お母様も眠れず疲労の原因にもなると思います。

 共倒れにならないように、お母様がデイサービスにいっている時間だけでも、介護者であるあなたがリラックスできる時間や趣味に集中できる時間を確保しましょう。自分の気持ちにゆとりがもてることを考えてください。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大学教授=介護福祉学